研究課題/領域番号 |
24730734
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研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
清村 百合子 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (50423223)
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キーワード | 伝統音楽 / 音楽科 / 授業開発 / 生成の原理 |
研究概要 |
本研究の目的は「質の認識」を育成する日本伝統音楽の授業モデルを開発し、「伝統音楽教育のための授業パッケージ」を制作することである。初年度は、日本伝統音楽の生成過程に関する基礎的研究を重点的に行い、授業モデルの開発への示唆を得ることができた。 第2年次の平成25年度は「授業パッケージ化に向けた教材開発」および「諸外国における伝統音楽教育の実態調査」について研究を進めた。その結果、以下の研究成果を得ることができた。 (1)伝統音楽における「音・ことば・身体」のかかわりに焦点を当てて、①群馬県《八木節》の囃子ことばづくりの授業、②京都のわらべうたの歌唱授業、③青森県《ねぶた囃子》の鑑賞の授業、について授業案を構想し、実践を依頼し、実践検証を行った。《八木節》の囃子ことばの実践では伝統音楽が生成してきた文脈に依拠して授業開発を行うことにより、子どもたちの囃子ことばの生成過程を明らかにすることができた。 (2)韓国における伝統音楽教育の実態調査として、平成25年4月に韓国の釜山教育大学および附属小学校を訪問し、大学教員および附属教員に伝統音楽教育に関するインタビューを実施した。韓国では伝承という立場を重視したカリキュラムや教育環境が充実していることが明らかとなった。 以上の研究成果を踏まえ、今後は授業パッケージの制作に向けて、授業実践を整理し、その成果と課題についてまとめる必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
授業開発および授業実践、韓国訪問を通して、伝統音楽の授業モデルの開発に向けて研究を進めることができたため、おおむね順調に進展していると判断した。 伝統音楽の授業は、伝統音楽が生まれてきた状況、すなわち音楽が生成されてきた文脈に視点をおいて授業を開発することが肝要である。それにより、単に音楽の構成要素に関する理解を深めるだけでなく、人や地域、風土とのかかわり、あるいは身体や言葉とのかかわりの中で、音楽学習が実現するためである。 以上の研究成果については、今後授業パッケージを制作する上での理論的根拠としたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、これまでの研究成果を踏まえ、「生成の文脈に依拠した伝統音楽教育の授業パッケージの制作」に取り組む予定である。そのために以下の手順を踏む。 (1)これまでに蓄積してきた授業実践を反省的に振り返り、改訂版の授業モデルを開発する。 (2)冊子体もしくはデータなど、媒体を用いて、「授業パッケージ」を制作する。 (3)「授業パッケージ」には指導案、ワークシート、授業づくりのポイント、などを盛り込む予定である。 なお、平成26年度は産休育休を取得するため、研究を一時中断する予定である。したがって上記の研究については、平成27年度に再開し最終年度として研究を完遂する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の当初研究計画では、教材開発の音源制作のため、会場の確保、録音機器、演奏者への謝礼などに研究費を使用する予定であったが、依頼先の演奏者の諸事情により、それらの制作作業を実現することができなかった。したがって、そのための予算を次年度使用額として計上し、授業パッケージのための必要経費に使用する予定である。 最終年度は伝統音楽教育の授業パッケージの制作を予定している。使用媒体は冊子体もしくはDVDの予定である。パッケージについては小学校・中学校の音楽教員に配布予定であるため、量産を予定している。したがって助成金については、パッケージの制作費用に当てるつもりである。
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