研究課題/領域番号 |
24730737
|
研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
近藤 裕 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (80551035)
|
キーワード | 算数教育 / 数学教育 / 内容 / 能力 / 情意 / 見いだす / 説明する |
研究概要 |
本研究の目的は,数学の授業において,子どもたちに,数学の内容理解,数学の能力形成,数学に対する情意面の向上を調和的に図るためには,子どもが見いだし説明する過程を重視することが有効であろうと考える立場から,そのための教材を開発し,実践を通した検証によって,その有効性を明らかにすることである。研究計画に従い,今年度は以下の点について研究を進めた。 1.初年度に検討した見いだし説明する過程を重視した授業の構成に関する枠組みについて,小学4年「面積」,小学4年「直方体と立方体」等の授業実践を行い,その結果に基づき引き続き検討した。 2.初年度に実施及び検討した小学3年「ぼうグラフ」の単元に関する子どもの見いだす様相についての知見をまとめ,国内学会において発表した。主として,クラス全体としては見いだす事柄は多様である一方,個人に着目すると見いだす事柄の数や種類に大きな差があり,指導の上で注意が必要であることを,事例に基づき具体的に指摘した。 3.新たに中学校教員と連携して,中学2年「連立方程式」の単元に関する教材を開発し,実験授業を計画・実施し,データの収集とその分析・考察を行った。主として,中学校数学の授業における子どもの見いだし説明する活動の保障について議論し,特に説明する活動の捉え方をより柔軟にすることの必要性が見いだされた。また,研究代表者の指導のもとで大学院生が,中学1年「星形多角形の角の和」,中学2年「紙を重ねてできる形の面積」についての教材開発を行い,それを用いた実験授業を実際の中学校現場において実施し,データの収集とその分析・考察を行った。主として,授業のねらいと子どもの実態とのバランスがとれた教材を扱うことの重要性と,その困難性について,具体的事例をもとに検討した。 4.国内学会および国際学会,また,イギリスの数学教育研究者とのセミナー等を通じて,各種の情報収集を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では,平成25年度以降は,「研究目的2(授業において具現化するための具体的な教材を開発すること)に関する教材の開発を本格化し,準備が整い次第,研究目的3(開発した教材の効果や妥当性を,実際の授業実践等を通した検証により明らかにすること)の授業実践を通した検証を行う」としている。 「研究目的2」については,小学4年「面積」,小学4年「直方体と立方体」,中学1年「星形多角形の角の和」,中学2年「連立方程式」,中学2年「紙を重ねてできる形の面積」に関する教材を具体的に開発した。 「研究目的3」については,上記の実験授業を学校現場において実施し,データの収集とその分析・考察を行っている。また,平成25年度末には,小学校の全学年を対象にした調査を実施した。これらのデータは,今後詳細に分析・考察していく。 さらに,新たに中学校教員を研究協力者に加え,研究連携体制を一層充実させた。 以上から,平成25年度の研究は,概ね順調に進展していると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究は,おおむね順調に進展しているので,引き続き,研究計画に従って研究を進めていく。 研究計画では,「平成25年度以降は,研究目的2に関する教材の開発を本格化し,準備が整い次第,研究目的3(開発した教材の効果や妥当性を,実際の授業実践等を通した検証により明らかにすること)の授業実践等を通した検証を行う。関連する情報収集と研究の途中経過の発表は随時行う」としている。 今後は,教材開発の対象とする内容領域や学年等を一層広げるとともに,開発した教材を用いた実験授業の実施・検証をさらに重ねていく。そして,本研究で開発される教材を用いて子どもが見いだし説明する過程を重視した算数・数学の授業を行うことが,子どもたちの数学の内容理解,数学の能力形成,数学に対する情意の向上に寄与することを示すエビデンスの一層の蓄積を図る。 特に,最終年度に向け,本研究について広く啓蒙する意味でも,小学校・中学校現場教員に対して広く協力を呼びかけ,より多くの現場教員が本研究に関わり,学校現場と大学とが一体となって研究を推し進めることに努める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
消耗品(印刷用トナー)が当初予定していた量より若干少なく済み,その分の購入費が次年度使用額となった。 最終年度を迎えるに伴い,多くの印刷を行う予定がある。そのための,印刷用トナーの購入費に当てる。
|