研究実績の概要 |
本年度の研究課題は、北欧諸国の評価規準ならびにルーブリックおよび学習理論を参考に、家庭科製作学習の学習モデルを構築することであった。具体的には、デンマーク、フィンランドの新カリキュラムおよび製作学習に関する学習理論(デンマークの「Processens Dialog (Illum,B.,2004)」とフィンランドの「Craft design process model(Anttila, P.,1993)」)を参考に、学習モデルを構築した。学習モデルのポイントは以下の2点であった。(1)製作活動の段階を区切り、各段階に学習目標を設定すること、(2)各段階で生徒が自己評価する対象を明確化すること。これら一連のプロセスを重視した学習モデルは、学習者と、素材、作品、他者との間のリフレクションを活性化させるものとなりうるだろう。 本研究の中で中心として扱ったデンマークの新教科「手工とデザイン」の特質は、対象とする素材が布、木工、金属と多岐にわたるため、題材にもとづいて教育目標を整理するのではなく、育成したい知識や技術の視点から教育目標を提示していた。また、北欧諸国の学校教育では、ICT・メディア教育、言語教育、職業教育等の充実が全教科に関わる目標として掲げられており、デンマークでは現在においても職業教育との繋がりを重視した教科として位置付けられていた。対象国の進路状況等を鑑みると特質として理解できるが、日本の義務教育段階でこれらの評価規準を直接的に取り扱う事については検討の余地がある。生活をよりよく豊かにする方法を学ぶ手立てとして、家庭科という一教科の学力を概観しながら製作学習の学習モデルを構築したことに、本研究の特徴があったといえる。
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