本研究は、部活動の問題行動への理解を深化させるため新規に中学部活動経験者を対象にした調査を実施し、部活動において発生する問題行動に関する実証的な分析を行った。具体的には次の4点を実施した。 第1は先行研究の整理および検討である。「CiNii」(論文情報ナビゲータ)の検索結果に基づく研究論文ならびに国内の書籍や海外の文献も収集し、先行研究における本研究の位置づけを明らかにした。 第2は質問紙調査の再分析である。本研究代表者は、2003年に大学生を対象にした高校部活動に関する質問紙調査を実施していた。その調査データを分析した結果、部員によるいじめや喫煙、飲酒は主に運動部を中心に発生していることが明らかとなった。また運動部においては指導者による体罰と部員同士のいじめや暴力に関連があることが明らかとなった。 第3は、インタビュー調査である。インタビュー調査の対象者は中学高校の時、運動部に所属した経験のある大学生(学部生、大学院生)とした。また指導者の意識や実態を把握するために、高校教員を対象にしたインタビュー調査も並行して実施した。部活動の問題行動のうち部員同士のいじめや暴力は部活動内の人間関係が原因として発生していることがインタビュー調査においても明らかにされた。 以上の3点の内容を踏まえて、第4は新規に質問紙調査を実施し分析を行った。質問紙調査は大学生を対象とした中学部活動に関する回顧調査で、2013年7月に7つの4年制大学(国立3校、私立4校)に所属する学生を対象に実施した。分析の結果、中学生時に指導者からの暴力被害経験があった者は部活動参加者全体の1割程度で、被害経験者は運動部に所属していたことが明らかになった。また指導者による暴力被害の規定要因について明らかにした。
|