研究課題/領域番号 |
24730744
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
和田 信哉 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (60372471)
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キーワード | 数学教育学 / 算数と数学の接続 / 代数的推論 / 記号論 |
研究概要 |
本研究は,小学校算数における数と計算領域から中学校数学における数と式領域への移行過程を,代数的推論の観点から明らかにすることを目的としてる。特に,小学校低・中学年段階において代数的推論を促進することに焦点化している。25年度は,小学校第2学年における「加法と減法の相互関係」の単元に関する教材開発と実験授業を行うことを計画した。 その結果,代数的推論を観点として開発した教材の有効性を確かめることができた。具体的には,代数的推論によって児童の式の見方が高まることが明らかになった。 代数的推論については,はじめに,児童は具体に基づく代数的推論によって新しく学ぶテープ図の規約性を協定化し,加法と減法の反義性を認識した。次に,いわゆる逆思考の問題を学ぶ中で,異なる見方から導かれる式の違いによって児童は葛藤を生じたが,抽象に基づく代数的推論と具体に基づくものとの相互作用によってその葛藤を解消し,加法と減法の同義性を認識した。 また,このような代数的推論の様相から,式に対する語用論的認識から意味論的認識の様相も明らかになった。式も言語であるから,式をその運用の中で認識している語用論的認識と,その意味を認識している意味論的認識があり,その移行の様相は次のようである。 最初の語用論的認識は,問題の状況の中にいる「私(児童)」が,その答えを求めるための道具として式を用いている状態である。そして,この単元のはじめに図的表現によって視覚的に反義性が認識される。しかし,逆思考の問題を考えることによって,式の見方の多義性が認識され,それらの見方から求答式と関係式が導かれる。これらの式は,同じ問題から導かれたものであるから同じ意味を有しているはずなので,それらの式及びそれぞれの式の見方の関係性について考えることで代数的推論が働いて,それらの式の理解が深まり,式の同義性が認識される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した25年度の研究実施計画と照らし合わせると,本年度はほぼその計画通りに進めることができた。ただし,小学校第二学年の乗法に関する実験授業は実施しなかった。昨年度のカリキュラムの検討に若干の遅れがあり,場合によってはこの実験授業を行わないことを視野に入れて進めていくこととしていたので,そのように判断した。しかし,それ以外では順調に研究が進展していると判断できるため,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進については,25年度の研究実施計画がおおむね順調に進展していることから,当初の26年度の研究実施計画に従っていきたい。
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