スペインの学校教育においては、「教育改善基本法」(通称LOMCE法)の公示に伴い国レベルのカリキュラムが示され、その後州レベルのカリキュラムが整備されると、2015年9月より学校音楽科において新カリキュラムが完全実施されることとなった。本研究を開始した当時のLOE法で重視していた多文化共生への促進など学校における多様性における対応について、LOMCE法においては減速させる側面がみられた。また、LOE法までは必修科目であった芸術科目が選択科目へと変更された。このため学校における実際の取り組み状況を確認するために、音楽教員の作成による2016年度版指導計画書を入手した。その中で、本研究上のフィールドとしているムルシア州では初等の芸術科目を必修扱いとしていることを確認した。また多文化共生に関わる「社会的コンピテンシー・市民コンピテンシー」の育成に向けた音楽活動の評価について検討したところ、7つのコンピテンシーのうち2番目に重点が置かれており、以前よりも消極的な取り組みになっているものの、各学年のほとんどのユニットに、このコンピテンシーと関わらせた活動が組み込まれていることを確認することができた。この中で、「社会的コンピテンシー・市民コンピテンシー」の育成に深く関わる音楽活動は、身体表現およびダンスの活動であることが分かってきた。これについては、来年度以降の新たな研究課題として、より具体的に検討していく予定である。 こうしたスペインにおける学校音楽科の動向について、多文化共生の取り組みとして具体的な実践方法を挙げながら、教員免許状更新講習において情報提供した(2016年8月、於信州大学教育学部)。 また、これまでの研究について論文としてまとめ、国内学会誌への査読付き論文として投稿した(現在査読中)。
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