研究課題/領域番号 |
24730749
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
金田 茂裕 関西学院大学, 教育学部, 准教授 (30402093)
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キーワード | 教育心理学 / 算数 |
研究概要 |
本研究の目的は、(A) 国内外の算数教科書・指導書における「図表現」を分析し、数的理解を支援または深化させる目的で、どのようなものがどういった場面で使用されているか、その特徴とバリエーションを明らかにすること、(B) 教育心理学的な調査・実験を実施し、多様な種類の図表現が、どういった点で数的理解を支援しうるか、また、深化につながるか、その教育的効果を実証的に検討すること、(C) 以上の知見を総合し、教育実践の現場に対して、図表現を用いた数的理解の支援と深化の方法を提案することである。平成25年度は下記3点の研究成果をあげることができた。 1. 論文「Generating scenarios of addition and subtraction: A study of Japanese university students」が The Journal of Mathematical Behaviorに掲載された。図表現を使用した作問課題により、大学生が加法と減法の話をどう作成するかを調べ、私たちは子どもの頃に学習した知識をどう使い、どう獲得しているかを検討した。 2. 論文「Generating scenarios of division as sharing and grouping: A study of Japanese elementary and university students」が Mathematical Thinking and Learning に掲載された。図表現を使用した作問課題により、小学生と大学生が減法の話をどう作成するかを調べ、私たちは学習した知識をどう使い、どう獲得するかを検討した。その成果の一部は、日本教育心理学会で発表した(2013/08/17)。 3. 著書「子どもの加減乗除の教育心理学(タイトルは仮のものである)」を構想、執筆を開始し、完成に近づいている。内容は9章からなり「加減乗除」という基礎的演算に関して、私たちは子どもの頃にどう学ぶか、知識をどう獲得していくかを教科書分析、教育心理学調査を通して明らかにするものである。加減乗除の図表現の検討を行い、学習支援の方法を探る内容でもある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の(A) (B) (C)のうち、(A) 「国内外の算数教科書・指導書における「図表現」を分析し、数的理解を支援または深化させる目的で、どのようなものがどういった場面で使用されているか、その特徴とバリエーションを明らかにすること」の作業を進めた。その成果は、現在執筆中の著書に含める予定である。(B) 「教育心理学的な調査・実験を実施し、多様な種類の図表現が、どういった点で数的理解を支援しうるか、また、深化につながるか、その教育的効果を実証的に検討すること」に関して、新たな調査・実験は実施できなかったが、すでに得ていたデータを新しい視点から分析する研究を実施した。その成果も、現在執筆中の著書に含める。(C) 「以上の知見を総合し、教育実践の現場に対して、図表現を用いた数的理解の支援と深化の方法を提案すること」に関しても、(A) (B)と同時進行で進めている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては、前述の(A) (B) (C)の点について研究を進めてきたが、さらなる研究課題を開拓し、成果を得るため、全体として、さらに検討を進める必要がある。(A)の作業をさらに進め、(C)につなげること、また、(B)の研究デザインを複数構想し、実施可能なものから開始することが重要となる。具体的には、1. 学習者の立場からみた図表現の種類とその理解に及ぼす影響、2. 教える立場からみた図表現の種類とその使いやすさに関する調査・実験などである。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の早い時点から、購入予定していた国外(フィンランド)の算数教科書(英語版)を選定し、業者に問い合わせをしていたが、購入可能かの回答が期間内に得られなかった。次年度、購入計画を再検討することにした。 上記の図書か、それに代わる図書、または、国内の教科書、指導書を購入する。
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