本研究では,多文化音楽教育を先進的に進めてきた米国を対象にその歴史的背景を明らかにしてきた。 その結果,1960年代に実施された現代音楽プロジェクトの目的の1つでもある,包括的音楽家性の育成といった枠組みのなかに多文化的な観点が含まれていることが明らかとなった。”多文化”という概念が生じたとされる公民権運動の流れとは異なる教育改革においてその概念が表出したことは特筆すべき点である。また,幼児期から系統的なカリキュラムが構築されており,音楽的な学習内容の充実を計りつつ,さらに学習者の状況に応じて多様な音楽を取り入れていくことによって,多文化教育の目的達成の一翼をも担おうとしていると考えられる。
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