本研究は、一枚の絵画とそれに関連した輪郭線を用いる活動により,子どもの絵画表現を活性化させる教育実践の試行と結果の整理を目的としている。これまでに,何かを見立てそれを手がかりに描画活動を始めることが出来るよう,あらかじめ画用紙にものの形の一部である輪郭線の入っている画用紙(輪郭画用紙と呼ぶことにする)を使用して,輪郭画用紙と白色画用紙を選択出来るようにし,子どもの描画発達の変化を調査してきた。幼年造形教育における実践研究の第1段階として,輪郭線を効果的に使用することが特定の年齢の子どもにとって有効であることを解明した。第2段階として,幼児教育への効果的な導入方法を検討するために,絵本を用いた活動によって検証を試みて,絵画活動に積極的な子どももそうでない子どもも共に楽しみながら,輪郭線を手がかりとして表現を広げることが出来ることを明らかにしている。第3段階として本年度は,これまで研究を進めた輪郭線を用いた活動を応用して芸術に触れる機会を用意することで,表現活動と鑑賞活動が無理なく融合される造形プログラムの実施と結果の検証を行った。 芸術作品とタイアップした表現活動の開発と、調査実施によって明らかになった結果にもとづき、原著論文を学術雑誌に積極的に発表している。 本年度研究成果として、研究論文「芸術作品の導入を緒に考察する絵画的表象の位相」を平成27年3月発行の学会誌(査読有)にて発表した。
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