本研究は、従来結果志向アプローチにより検討されてきた、発達性協調運動障害(DCD)が疑われる子どもの運動パフォーマンス分析を、過程志向アプローチにより再検討することを試みた。すなわち、DCDが疑われる幼年期の子どもを対象として、予測を必要とされるかつ日常的な課題を用いて、フィードフォワードからみる運動パフォーマンスの特徴を明らかにすることで、DCDが疑われる子どもへの効果的発達支援につながる基礎資料を得たいと考えている。 最終年度は、これまでの研究の概観や予備実験等の結果をふまえ、DCDが疑われる幼児・児童を対象とした本実験とその分析にあたった。遊びや体育の時間に展開されたいくつかの動き、例えばスポーツチャンバラの動きをもとに、対象児の運動パフォーマンスの過程を分析した。DCDが疑われた子どもとそうではない統制群の子どもとでは、相手に当たった回数や空振りする確率はほぼ同じで差が見られなかった。だが、特に肘関節と股関節の運動自由度において、大きく差が見られ、またそれが動きのなめらかさへの印象に大きな影響を与えていた。その後「ぐーっと」のようにオノマトペを用いて肘関節・股関節を大きく動かすように援助することで改善がはかられた。DCD児の動きの不器用さの背景に周囲の環境に対する瞬時の判断にゆがみがあるという仮説が、本研究でも顕著に示唆されており、今後の指導・援助法の開発の一助となると考えられた。
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