研究課題/領域番号 |
24730757
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
岡澤 慎一 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (20431695)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 重度・重複障害 / 共創コミュニケーション |
研究概要 |
本研究の目的は,欧州において先天性盲ろうの子どもの教育における取り組みから展開されている共創コミュニケーション(co-creating communication)の枠組みを,多様な障害を併せ有する重度・重複障害児への教育実践に適用し,以下の2点について検討することであった.すなわち,第1点目は,重度・重複障害児との共創コミュニケーションの諸相を実証的に明らかにする資料を収集・蓄積することである.第2点目は,共創コミュニケーションが円滑に展開する条件とそのなかで重度・重複障害児の行動の意味理解に至る過程を詳細に分析することである.本年度は特に第1点目の目的を中心に実施した.収集された映像資料は以下のとおりであった.1)寝たきりで人工呼吸器を装着されており,追視や注視など視線の動きや表情変化,発声運動が見出されるものの,四肢の動きについては,痙攣様の動き以外には表出の目視が極めて困難なほどに微弱な超重症児とのセッション30回,2)食事場面における重症心身障害者とのセッション11回,3)行動の切り替えが困難な肢体不自由事例とのセッション18回,4)不確定状況およびコミュニケーション不全状況において調整が著しく乱れがちな重度知的障害事例とのセッション16回,5)先天性筋疾患二事例とのコミュニケーションおよび意図的表出の促進に関わるセッション各々28回,27回,6)重度肢体不自由事例とのヒラガナ文字言語信号系活動の促進に関わるセッション11回,視覚と聴覚の障害に加え重度肢体不自由を有する重複障害事例とのコミュニケーション促進に関わるセッション8回,であった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にあるように,本年度は重度・重複障害児との共創コミュニケーションの諸相を実証的に明らかにする基礎的資料149セッション分を収集することができ,さらにその一部について分析も進んでおり,2013年度の学会発表に向けて用意を進めているところである.
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今後の研究の推進方策 |
今後,本年度収集した教育実践の経過に関する映像資料ついては,以下の手続きにより検討する.1)各々の映像資料について,係わり手の意図や対象児の微細かつ瞬間的な行動,あるいは行動文脈などを補足したエピソード記録を作成する.2)撮影した映像を研究協力者とともに共同視聴し,対象児の行動の意味や係わり手との相互交渉の様相について討議・検討を行なう.また,量的分析については,行動観察分析装置(DKH社製 行動コーディングシステム PTS-113)を活用し,分析は,行動観察分析装置およびビデオ再生機の時間表示に基づきミリ秒単位で,対象児の行動に関しては発現部位とその回数および動きの型など,係わり手からの働きかけに関しては働きかけた身体部位と働きかけの内容,継続時間,気付いた点などを,時系列の上にプロットする.対象者に見出された行動とその際の係わり手の対応をコーディング,数量化し,各々の相互連関を詳細に分析し,記述記録を補完する.
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次年度の研究費の使用計画 |
以下のように使用する予定である.すなわち,1)映像資料の収集に関わるセッションにおいて使用する各種教材や玩具の購入,2)セッションを撮影する記録媒体の購入,3)研究フィールドおよび学会参加に関わる旅費,である.
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