研究課題/領域番号 |
24730757
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
岡澤 慎一 宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (20431695)
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キーワード | 重度・重複障害 / 共創コミュニケーション / 表出行動 / 意味理解 |
研究概要 |
本研究の目的は,共創コミュニケーション(co-creating communication)の枠組みを,多様な障害を併せ有する重度・重複障害児への教育実践に適用し,以下の2点について検討することである.すなわち,第1点目は,重度・重複障害児との共創コミュニケーションの諸相を実証的に明らかにする資料を収集・蓄積することである.第2点目は,共創コミュニケーションが円滑に展開する条件とそのなかで重度・重複障害児の行動の意味理解に至る過程を詳細に分析することである.本年度は,第1点目の目的を実施するとともに,収集された映像資料の分析を進めるなかで第2点目の目的にも一定程度の接近を試みた.その結果,まず,2013年4月から2014年3月の間に収集された映像資料は以下のとおりであった.事例1:継続的で濃厚な医療的ケアを必要とする超重症児とのセッション27回,事例2:食事場面におけるコミュニケーションに視点をおいた重症心身障害者とのセッション10回,事例3:行動の切り替えが困難な肢体不自由児とのセッション12回,事例4:行動が著しく乱れがちな重度知的障害児とのセッション14回,事例5:身体の動きが極めて制限される脊髄性筋萎縮症児とのセッション34回,事例6:身体の動きが極めて制限される筋疾患児とのセッション29回,事例7:ヒラガナ文字言語信号系の学習に取り組む重度肢体不自由者とのセッション10回,事例8:視覚と聴覚の障害に加え重度肢体不自由を併せ有する重度・重複障害児とのセッション10回,であった.さらに,事例5,事例6,事例8については,分析を進め,各々学会にて発表した.また,事例1については,共同的活動における身体の動きの表出促進と意味共有の過程の分析が進むなかで貴重な資料が得られており,学会誌へ投稿の準備を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重度・重複障害児との共創コミュニケーションの諸相を実証的に明らかにする基礎資料146セッション分を収集することができ,また,これまでに収集した資料の分析結果の一部は学会にて発表するとともに,学会誌への投稿の準備を進めることができているため.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,収集した教育実践の経過に関する映像資料ついては,以下の手続きにより検討する.1)各々の映像資料について,係わり手の意図や対象児の微細かつ瞬間的な行動,あるいは行動文脈などを補足したエピソード記録を作成する.2)撮影した映像を研究協力者とともに共同視聴し,対象児の行動の意味や係わり手との相互交渉の様相について討議・検討を行なう.3)量的分析については,行動観察分析装置(DKH社製 行動コーディングシステム PTS-113)を活用し,分析は,行動観察分析装置およびビデオ再生機の時間表示に基づきミリ秒単位で,対象児の行動に関しては発現部位とその回数および動きの型など,係わり手からの働きかけに関しては働きかけた身体部位と働きかけの内容,継続時間,気付いた点などを,時系列の上にプロットする.今年度はさらに,4)各々の映像資料について共創コミュニケーションの観点からの考察を加えることとする.
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