表情の変化や自発的運動を見いだしにくい超重症児を対象に、1)対象児自身の拍動のフィードバックが自律神経系に及ぼす影響の検討、2)活動におけるかかわり手の理解の深まりとかかわりの変遷について整理した。活動は、安静時の心拍数を確認後、①手指の歌、②メトロノーム、③音楽等を行った。②③は、対象児の拍動に応じて0~+5bpmの速度で刺激を呈示した。1)③において対象児の活動開始時における平均HR73bpmを基準に、HR変動が異なる推移を示した。ⅰ)HR73bpm未満の活動において、+5bpmの音楽を呈示すると、HRが加速方向へ変化した後に、音楽呈示終了後100secが経過する頃までに活動開始時の基線HRへと減ずる有意な変化が認められた。ⅱ)HR73bpm以上の活動において、対象児の拍動に合わせた刺激呈示中は、HRが上昇方向へ変化し、+5bpmになると下降方向へ変化した。音楽呈示後の100secが経過する頃には、音楽呈示前とほぼ同じHRまで戻ることが認められた。2)①におけるかかわりの変遷について述べる。曲のリズム、歌詞に合わせて「握手」「手指のマッサージ」「手首の回旋」「手掌のタッピング」を行い、皮膚感覚、深部感覚を刺激した。かかわりを積み重ね、ビデオ記録とHR変動記録を確認する中で、ⅰ)身体の動きないしHRの一過性変動が認められる回とそうでない回があること、ⅱ)左右どちらかの手に触れるかで身体の動き、HR変動に差があるのではないかということを見いだした。これらの結果から、従来から取り組まれてきた超重症児の教育支援において、応答的な環境の設定や不随意運動に着目することに加え、超重症児自身の拍動をフィードバックすることが、彼らの覚醒に影響を及ぼす可能性があること、かかわりの省察を繰り返すことで、かかわり手の視点が変容し、新たな状態変化の発見につながることが示唆された。
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