研究実績の概要 |
2008年に施行された「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」では、国の責務として弱視の児童生徒に加え、通常の教科書での学習が困難な児童生徒にも拡大教科書の活用ができるよう調査研究を推進することが謳われている。学習障害(LD)の中核症状と考えられている発達性読み書き障害(developmental dyslexia)児は、日本での出現頻度が約8%と報告(Uno et al.,2009)され、発達障害の中では最も多い障害群であるため、拡大教科書がもたらす恩恵を強く受ける可能性があるが、日本では未だ充分な検討がなされていない。本研究では、拡大教科書によって変化する視覚的要因が、日本語話者の発達性読み書き障害児の音読の正確性と流暢性に与える影響を明らかにする。 本年度は、日本語話者の発達性読み書き障害児を対象に文字の大きさが音読の正確性と流暢性に与える影響を検討した。対象は小学生から高校生までの発達性読み書き障害児8名である。ひらがな単語と非語の音読課題(書字方向:縦書き、横書き/文字の大きさ:小、中、大)を実施した。対象児には、「これから見せる文字や文章をできるだけ速く間違えないように読んでください」と教示し、「始め」の合図をしてから刺激を提示した。音読サンプルをICレコーダーで録音し、音読所要時間をストップウォッチで計測した。本研究では音読所要時間と誤読数を分析対象とした。音読課題終了後に全課題を再度提示し、文字の大きさによって読みやすさに変化があったか否か内観を聴取した。実験結果については現在解析中のため、研究成果報告書にて解析結果を述べる。
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