研究課題/領域番号 |
24730772
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研究機関 | 埼玉純真短期大学 |
研究代表者 |
浦 由希子 埼玉純真短期大学, その他部局等, 講師 (60528363)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 読解 / 聞き取り / 語彙 / 指導 |
研究概要 |
1.目的:本研究では学童期の読解の問題を予防するため、読解と処理過程が似ており、相関も強い聞き取り能力に着目し、聞き取りに語彙指導を組み合わせた指導法を考案し、その効果を検証した。 2.方法 (1)対象児:42名の年長児(5歳7ケ月~6歳6ケ月、平均:6歳0ケ月、男児27名、女児15名)(2)スクリーニング課題: PVT(絵画語彙発達検査)とITPAの「言葉の類推」を実施した。先行研究より、両検査とも標準値からマイナス1.25SD以下の場合、言語の問題があると仮定した。その結果、6名が該当した。(3)指導教材:まず、先行研究を元に、名詞38語、動詞211語を指導語彙として選択した。次に、これらの言葉を含むようにして、子供用のお話(2500文字程度)を作成した。その後、作成したお話を内容ごとに区切り、各内容に合う絵を作成した。(4)指導:週1回、1ヶ月間、2~3名でのグループ指導を行った。指導内容は、お話を読み聞かせ、その中に出てくる語彙を内容と関連付けながら指導した。(5)評価:聞き取り課題(計12問)と語彙課題(計20問)を指導前と指導後に行った。 3.結果:聞き取り課題においては、全体の平均正答率は事前が18.1%(標準誤差5.0)、事後が59.7%であった(標準誤差5.4)。語彙課題においては、全体の平均正答率は事前が50%(標準誤差4.7)、事後が62.5%であった(標準誤差3.1)。 4.考察:聞き取り課題では全員に40ポイント以上の伸びが見られたことから、本研究で用いた教材や語彙を使った指導方法が聞き取りの向上に有効であったことが伺われた。しかし、伸びの度合いには個人差が見られ、各対象児の言語の問題の重症度によって左右されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
達成度を「遅れている」と判断した一番の理由は、目的とした3つの指導形態の比較が出来なかったためである。今回研究のオリジナルとして掲げていた聞き取りと語彙を組み合わせた指導は行えたものの、語彙指導のみ、また全く指導しなかった場合の検討まで行うことができなかった。これは指導教材を作成するのに多くの時間を割いてしまったことが原因である。その結果、スクリーニングの期間及び指導期間を短縮せざるを得なくなり、他の指導形態の実施が難しくなってしまった。また、第2点目の理由として、今回対象としたLDリスク児の数も当初予定していた数の七分の一にとどまった点も挙げられる。上記にも述べたように、指導教材の作成に時間を多く割いてしまい、各園への依頼の時期が大幅にずれてしまった。結果、3園のみに依頼をかけるにとどまり、うち1園は予定していた計画より開始時期が大幅にずれてしまったため、未実施になってしまい、残り1園はスクリーニングの段階までは順調にいっていたが、指導の段階で園側の事情により研究を中断せざるを得なくなってしまった。これは園側とスケジュールや内容について、細かな点まで話しを詰めておかなかったことが原因と考えられた。また、第3点目の理由として、指導期間の短縮が挙げられる。当初の目的として、各指導を2ヶ月ずつ行うことを予定していたが、1ヶ月の指導期間しか取ることができなかった。かつ、指導回数も研究計画の段階では、毎日行うこととしていたが、家庭の指導から園における指導に変更したため、園の状況も考慮した結果、月4回の指導にとどまった。 以上のことから、当初掲げていた研究目的を遂行するには、「比較のための他の指導形態の欠如」「統計解析に耐えうる対象児の数の欠如」及び「指導回数の欠如」が挙げられ、達成状況を「(4)遅れている」とした次第である。
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今後の研究の推進方策 |
1.スクリーニング(平成25年9月~平成25年10月):研究協力の得られた埼玉県内の保育園及び幼稚園の年長児約300名を対象に、スクリーニングを行う。スクリーニングは、当初の計画では、個人の研究課題を使用することとしていたが、評価点の算出や対象児の言語年齢を正確に把握するため、PVTやITPAなど標準化されたテストを使用することとする【変更①】。 2.評価(平成25年11月~平成25年12月):1のスクリーニングで得点の低かった幼児の知的能力や言語能力を調べる。併せて多動やこだわりといった行動上の問題も調べる。その結果、行動上の問題はなく、動作性IQも高い(85以上)にもかかわらず、言語性IQや言語課題での成績が低い者をLDリスク児として特定する。 3.指導(1)指導プログラムの作成(平成25年5月~平成25年8月):当初予定していた家庭での指導は保護者の状況に左右される可能性が高いため、家庭ではなく園での一斉指導とする。指導内容をDVDに納め、DVDに登場する人物が子どもに問いかけたりして指導を進めるようにし、保育者の指示などが指導効果に影響を与えないように配慮する【変更②】。 (2)指導方法:当初予定していた同一グループに2つの指導方法を行い、その効果を比較するためには、難易度の同じ語彙を用いることが前提となる。しかし、日本では子どもが使用する語彙を難易度別に分類したものはないため、対象児を2グループに分け、同一の語彙を使って、「聞き取り&語彙」指導のグループ及び「語彙指導」のグループの小学一年生段階における読解テストの点数を比較する【変更③】。 (3)指導期間(平成26年1月~平成26年3月):(1)の変更に伴い、指導は3ヶ月間、週3回の指導とする。1回の指導時間は30分とする【変更④】。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.スクリーニングと評価:各園を訪問する際の旅費(ガソリン代等)に使用する。また各園で検査を実施してくれる協力者にも謝金を支払う。 2.指導プログラムの作成:(1)各お話に合う絵を作成してくれる協力者に謝金を支払う。また、絵の具や紙類の購入に充てる。(2)指導プログラムのDVDに登場してくれる人に謝金を支払う。また、それを撮影してくれる人にも謝金を支払う。 その他、書籍や文献複写、郵送代等に使用するものとする。
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