研究課題/領域番号 |
24740008
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
木村 杏子 静岡大学, 理学部, 助教 (60572633)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 算術階数 / 射影次元 / 極小自由分解 / ベッチ数 / エッジイデアル |
研究概要 |
多項式環のイデアルに対し、算術階数という量が定義される。それは、イデアルを up to radical に生成する元の個数の最小値である。スクエアフリーな単項式イデアルの算術階数は、射影次元を下限としてもち、多くの場合で一致していることが期待される。射影次元は極小自由分解の長さである。自由分解の視点から、算術階数をとらえることが、本研究の主題である。 まず算術階数に関して、deviation が 2 のイデアルの Alexander 双対イデアルについての既知の結果をまとめることを試みた。考察の結果、Stanley-Reisner イデアルについて、単体的複体の2つの面上の錐をとったときの算術階数および射影次元の変化を調べることが、効率的であるように思われた。なお、1つの面上の錐を取ったときは、Barile-Terai が行っており、これにより、2-linear resolution をもつイデアルの算術階数が決定された。この方針は、その類似でもあり、また、算術階数の決定に、新たな道具を与えることにつながる。算術階数や射影次元について、ある程度の評価は得られたが、満足できるものにするためには、さらなる考察が必要である。 一方自由分解に関連して、エッジイデアルのベッチ数に関する研究を行った。その結果、エッジイデアルのベッチ数の非消滅性に関して、新たな十分条件を見つけた。これは、Katzman や研究代表者による先行結果を一般化するものである。さらに、Cohen-Macaulay 二部グラフについて、Herzog-Hibi や Mohammadi-Moradi の結果を用いることで、ある特別な非消滅なベッチ数について、逆が成立していることが分かった。この結果は、Francisco-Ha-Van Tuyl による、このグラフの regularity の特徴づけを含むものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エッジイデアルのベッチ数の特徴づけに関する研究は、順調であるように思われる。しかしながら算術階数の方は、当初の計画ほど進んでいない。算術階数の決定に関しては、徐々に成果が上がり始めている感があるが、自由分解の視点から捉えることはあまりできておらず、このような考察を進め、また得られた結果をまとめていかなければならない。
|
今後の研究の推進方策 |
deviation が 2 のイデアルの Alexander 双対イデアルの算術階数についての研究を続ける。高さ3の Gorenstein イデアルや次数3の lexsegment イデアルについては徐々に成果が上がりつつあるので、共同研究者である寺井直樹氏(佐賀大学)と密に連絡を取りながら、論文にまとめる。これらの結果は学会などで発表し、広く知らしめるとともに、幅広い意見を求める予定である。 また、エッジイデアルのベッチ数の特徴づけに関して、今年度得られた十分条件が必要条件となるグラフのクラスを探る。regularity の特徴づけがなされているような二部グラフのクラスが、そのようなクラスになっているのではないかと期待している。 さらに、cellular resolution 等、自由分解と算術階数の関係についての研究を本格的に始める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度は研究成果の関係上、研究連絡をあまりとらなかった。書籍も想定より安価で購入できた。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度以降に請求する研究費は当初の予定通り使用し、今年度の余剰分は、次年度の研究連絡の回数を増やすことに使用する。
|