多項式環のイデアルに対し、算術階数と呼ばれる不変量が定義される。それは、イデアルをup to radicalに生成する元の個数の最小値である。本研究の目的は、算術階数およびそれを与えるup to radicalな生成元の構成と自由分解との関係の解明である。 昨年度までに得られた結果として、高さ3のGorensteinイデアルの算術階数の決定(寺井直樹氏との共同研究)、stringやcycleという超グラフに付随するイデアルの算術階数の決定(Paolo Mantero氏との共同研究)があるが、今年度には、前者を出版、後者をアクセプトにまでこぎつけた。さらに、後者の結果は、沼田泰英氏との共同研究により、treeの場合に拡張した。また、deviationが2のイデアルのAlexander双対イデアルについて、結果を論文にまとめ投稿し、アクセプトされた(寺井直樹氏、吉田健一氏との共同研究)。 一方、エッジイデアルの極小自由分解に関する研究も、本課題の目的の一つであり、昨年度までに、エッジイデアルのベッチ数の非消滅性に関する結果が得られたが、今年度にはその論文をアクセプトにまでこぎつけた。unmixed bipartite graphの射影次元の特徴付けもそこで得られた結果の一つであるが、この結果をvery well-coveredグラフに拡張する研究が、寺井直樹氏、Siamak Yassemi氏と共同で進行中である。その他、グラフに関する研究を日比孝之氏、東谷章弘氏、土谷昭善氏と共同で行い、結果を論文にまとめ現在投稿中である(arXiv:1412.3881)。 今年度の主目標であった、自由分解からのup to radicalな生成元の構成については、Batzies&Welkerの論文に最初の研究対象となりうるものを見つけたが、成果を上げるには、もう少し考察が必要である。
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