平成27年度は、26年度に私により確立された、剰余的自由配置に関連した研究を更に推進した。剰余的自由配置の考察の鍵となったのが、やはり私により示された超平面配置の自由性に関する剰余定理である。これは、制限配置のポアンカレ多項式が元の配置のそれを割り、かつ制限配置が自由であれば、元の配置が自由であることを主張している。27年度は、この逆を考察した。即ち、ポアンカレ多項式に関する同じ条件下、元の配置が自由であれば、制限もまた自由ではないか、という問題である。これは、ポアンカレ多項式の条件がなければ、Orlik予想と呼ばれていた、すでに反例のある過去の問題である。しかし、反例は本質的に二つしか見つかっていないため、代数幾何的には何ら道理のないこの予想を支持する何かがあると私は考えた。そこで私は、上の条件を用いて弱Orlik予想とでも呼ぶべきものを定式化し、それが成立するケースを考察した。 次に、ボン大学の修士学生であるLukas Kuehne氏と、重超平面を持つ多重配置の自由性を論じた。重超平面とは、重複度が全体の重複度の和の半分を超えるものである。これは二次元の場合の振る舞いがよく知られていたため、それを今回初めて高次元化した。
続いて、研究期間を通じての研究成果を述べる。本研究は、自由配置の幾何学を様々な側面から考察することを目指していた。その目標は、直線の交点数のベッチ数的制限及び、自由性の十分条件を与えることにより、射影平面の直線配置において大きな成功を収めた。そして上述した剰余的自由配置の導入により、自由配置研究における極めて重要なステップの確立に成功し、当初の研究計画を大きく上回る成功を収めた。更にこの剰余的自由配置は、剰余旗と呼ばれる旗の存在と同値なため、Schechtman-Varcehnko理論を通して、コホモロジー環や基本群と関連があり、今後の発展が期待される。
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