Eichlerは1950年代の論文で、SL(2;R)とSU(2)の保型形式の間のL関数を保つ同型対応を証明した。1960年代に伊原康隆氏はこのEichler対応を2次のシンプレクティック群の場合にも一般化する問題を提唱した。この問題は未解決であるが、一つの方法として明示的次元公式の比較に依る方法で、対応する素数レベルの離散群を特定して詳細な予想が提唱されている。しかし、2次ジーゲル保型形式の次元公式は離散群のレベルが素数の場合にしか知られておらず、そのせいで知られている予想はどれも素数レベルに関するものであって、レベルの拡張は行われていなかった。本研究計画の目的は、以前は行われていなかった一般化されたレベルにも範囲を広げ、より詳細な研究を展開することである。そのアプローチとして、保型形式の空間の間での次元の比較を行う為の明示的次元公式をSelberg跡公式から導出する研究をレベルを拡張して実行する。これまでの研究で、「平方因子を持たないレベルのパラモジュラー群についてのベクトル値ジーゲルカスプ形式の空間」と「Sp(4;R)の非分裂型Q形式に関するベクトル値ジーゲルカスプ形式の空間」のそれぞれの次元公式の間での明示的な関係式を根拠として、両者の空間の対応およびリフトの予想を提唱した。加えて、その予想の数値的根拠としてL関数のオイラー因子の数値実験を行い、一致を確認した。また、パラモジュラー形式のnewformsに関する詳細な考察も行った。今年度はこれらの結果をより詳細に整備し、研究論文としてまとめあげ、学術雑誌に投稿した。
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