代数体上に定義された代数多様体の有理点については、その算術的な「大きさ、複雑さ」を測る量として高さとよばれる量がある. 代数多様体がそれ自身への支配的有理写像を持つときに、その写像に関して良く振る舞う高さ(標準的高さ)が存在すれば、その標準的高さを用いて代数多様体と写像の算術的な性質を分かることがある. 一方, 代数多様体がそれ自身への支配的有理写像について,写像の増大度を測る力学的次数という基本的な量がある.今年度は,部分多様体について,高さの増大度がどうなるかを調べた.また,非アルキメデス幾何との関係から忠実なトロピカル化について調べた.また,研究期間全体を通じて,シルバーマン氏との共同研究で,力学系数と有理点の算術的次数に対する関係で,基本的な性質を得るなど,満足できる結果を得ることができた. その応用として,アーベル多様体のネフな直線束に関する標準的 高さ関数について、その高さが0の有理点はアーベル多様体で次数の低い部分アーベル多様体を平行移動した部分アーベル多様体の有限個の共通和に含まれることが分かる.また,山木壱彦氏と共同で、その双対グラフ上の因子がいつ一般ファイバーの因子に、階数を保ったまま持ち上がるかという問題を考え、超楕円曲線と種数が3の場合に満足できる結果を得ることができた.これらの結果について,今年度に,カナダのBanff での研究集会や,イタリアの SISSA での研究集会,また,東京大学での代数学シンポジウム,日台整数論の研究集会で講演の機会を頂いた.
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