研究課題/領域番号 |
24740021
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
伊藤 稔 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (60381141)
|
キーワード | 不変式論の第二基本定理 / Cayley-Hamilton定理 / 外積代数 / Amitsur-Levitzki定理 / トレース付き代数 |
研究概要 |
引き続き、多項式環における不変式論の研究を進めた。不変式論の第一基本定理や第二基本定理が具体的に書き下せる不変式環は多くないが、古典群の作用に関するある8つの系列の不変式環はその第二基本定理が Cayley-Hamilton の定理やその類似物で記述できる。この現象が、もっとも基本的な系列についてはトレース付き代数とwreath積の枠組みで整理できることに気付いた。Pfaffianが関係する系列については、加群においてトレース付き代数やwreath積に相当する新しい概念が必要になる。 また外積代数における不変式論とAmitsur-Levitzki型定理の関係について、研究を進めた。もっとも基本的な例は正方行列のなすベクトル空間の上の外積代数のconjugationに関する不変式環である。可換な枠組みとパラレルな性質がいくつも見られる。Cayley-Hamilton定理の類似も得られて、これはAmitsur-Levitzki定理の精密化とも捉えることができる。同様の議論は交代行列のなすベクトル空間の上でも可能であり、これはKostantによるAmitsur-Levitzki型の定理と関連する。さらに交代行列のなすベクトル空間と対称行列のなすベクトル空間の直和の上で同じような議論を行うと、Gianbrunoの1990年の結果を精密化した新しいAmitsur-Levitzki型定理を得る。これらの結果を論文"Invariant theory in exterior algebras and Amitsur-Levitzki type theorems"にまとめた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を続けている8系列の不変式環の第一基本定理・第二基本定理については、もっとも基本的な系列はトレース付き代数やwreath積などの枠組みで整理できた。Pfaffianが関係する系列も同じような方法で理解できるが、加群においてトレース付き代数やwreath積に相当する新しい概念が必要になる。 反可換な枠組みの不変式論についても、複数の不変式環でPfaffianに相当する概念を発見した。可換な枠組みとパラレルな様子が見られて、興味深い。Amitsur-Levitzki型定理との関係も前進している。 当初に計画していた微分概念との結びつきはあまり進んでいないが、全体としては順調である。
|
今後の研究の推進方策 |
高階のCayley-Hamilton型定理で第二基本定理が記述できる多項式環の不変式環が8系列あるが、そのうち3系列はまだ第二基本定理がSchur多項式のかたちまで整理できていない。これを決着させたい。またもっとも基本的なものはトレース付き代数とwreath積の枠組みで整理できるが、それ以外のものは加群のレベルでそれに相当する概念が必要になる。これを整理したい。 外積代数の不変式論はさらにまだ不明な点が多い。第一基本定理についてはかなりわかったつもりであるが、Pfaffianに相当する不変元などの新しい発見もあり、理論的背景を整理する必要がある。さらに第二基本定理や高次のCayley-Hamilton型定理についてまだまだ不明な点が多い。トレース付き代数などの枠組みで整理したい。 最終的には可換・反可換を含むさらに大きな枠組みでの理論に統合することを目指す。そこで以前に得たテンソル代数における微分概念と結びつけたい。微分概念については、対称群と一般線型群をまとめて取り扱う枠組みはできており、これをうまく活かしたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
海外出張を行わなかったため。情報収集、研究発表に適した海外の研究集会に参加するチャンスがなかった。海外の研究者との打ち合わせも計画していたが、日程の都合が合わなかった。 6月末から7月にかけてシカゴで行われる「The 26th International Conference on Formal Power Series and Algebraic Combinatorics」に参加予定。海外の研究者との打ち合わせも計画している。
|