研究課題
若手研究(B)
多項式環の自己同型写像で変数に写される多項式を,多項式環の「座標」と呼ぶ.座標の概念は多項式環の研究において非常に重要であり,アフィン代数幾何学における様々な未解決問題とも関係がある.座標の概念を一般化した「安定座標」の重要性も認識されつつあるが,安定座標については依然として不明な点が多い.平成24年度は主に高階導分の手法を用いて,安定座標の性質を調べる研究を行った.加法群G_aの多項式環への作用による不変式に関して,ダークセン・ハダス・マカリマノフの定理という有名な定理がある.この定理より,座標のニュートン多面体はある顕著な特徴を持つことが分かる.今回,私はG_a不変式の一般化である「安定G_a不変式」の概念を導入し,高階導分の手法を応用することで,ダークセン・ハダス・マカリマノフの定理を安定G_a不変式の場合に一般化することに成功した.それにより,座標のニュートン多面体が持つ特徴を安定座標も持つことが証明された.安定座標の研究では環論的なアプローチも有効である.そこで,この方面の研究に詳しいIndian Statistical InstituteのA. ダッタ氏とN. グプタ氏を訪問し,安定座標に関する環論的な研究についての議論を行った.また,N. グプタ氏は,クラチオラ・マカリマノフによる局所有限反復高階導分の手法を応用し,正標数の体上の「消去問題」を否定的に解決したばかりであったので,この研究についての議論も行った.イタリアや中国で開催された関連領域の国際会議でShestakov-Umirbaev理論に関する招待講演を行い,この方面の研究に高い関心を持つ欧米や中国の研究者たちと議論を行った.アフィン代数幾何学研究集会(大阪)や多項式環論セミナー(静岡)等の開催にも協力した.
2: おおむね順調に進展している
アフィン代数幾何学において重要な「安定座標」に関して新たな結果が得られたため,これを効果的に利用することで,さらに研究が進展することが期待できるため.
平成24年度に引き続き,国内外の関連分野の研究者たちと交流しながら,アフィン代数幾何学の諸問題への高階導分の手法の応用の研究を進める.アフィン代数幾何学では「安定性」の問題が生じる状況が数多くあるが,平成24年度に得られた成果を踏まえ,この方面の研究も重視していきたい.
平成24年度は研究の展開の状況等を考慮し,予定していたPCやソフトの購入を見送ったため,研究費の一部が未使用となった.この未使用分の研究費は,平成25年度に同じ目的で使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 3件)
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