研究課題/領域番号 |
24740024
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
中筋 麻貴(中筋麻貴) 北里大学, 一般教育部, 講師 (30609871)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ワイル群多重ディリクレ級数 / 可解格子模型 / Factorial Schur関数 |
研究概要 |
保型表現論の分野で定義されるワイル群多重ディリクレ級数の性質を解明することを目的として,本研究では,可解格子模型理論を[1]解析数論や[2]シューベルトカリキュラスにおいて報告された結果との対応に取り組んだ. [1]可解格子模型の特長であるYang-Baxter方程式を,ワイル群多重ディリクレ級数のp-partに用いるために,新たに構築しなおした.さらに,この再構築されたYang-Baxter方程式を,数論や表現論と関係する対称関数の1つであるFactorial Schur関数に応用し,いくつかの従来の結果に別証明を与えた.結果自身は,既知の事柄であるが,証明に可解格子模型,すなわちSix-vertex modelを用いた新手法を用いた.特に,Schur関数に関する数論および表現論における古典的な結果として知られるCauchy identityについて,Schur関数をFactorial Schur関数に拡張した(dual) Cauchy identityを示した.本結果では,他の結果で用いたYang-Baxter方程式とは異なる別のYang-Baxter方程式を新たに再構築した. [2]半単純代数群のIwahori部分に対して不変となる主系列表現の基底であるCasselman基底の明示公式について,先行研究においてKazudan-Lusztig多項式に関連する条件で分類した予想を得た.これをシューベルトカリキュラスに対応させるため,先行研究をプログラム化した.今後,これを活用して,シューベルトカリキュラスにおいて報告されている結果や理論と対応させていく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[1]可解格子模型と数論との対応については,ワイル指標の具体的表示が必要であることが明らかになった. [2]半単純代数群のIwahori部分に対して不変となる主系列表現の基底であるCasselman基底の明示公式について,先行研究において得た予想をシューベルトカリキュラスに対応させる研究について,具体的な方針が定まった. [1]および[2]のどちらにおいても,問題点が明らかになり,今後の方針が明確に定まったことから,研究は順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って今後の研究を進めていく予定である. 特に,[1]可解格子模型と数論との対応については,ワイル指標公式と可解格子模型の関係に絞り,研究を進めて行く.[2]可解格子模型とシューベルトカリキュラスとの対応については,今年度の研究で得たプログラムを活用して,研究を進めていく.特に本研究が,シューベルトカリキュラスのHook公式と関係がある可能性について助言をいただいた岡山大学の成瀬弘教授と研究打ち合わせを行うことで研究を進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
[旅費] 平成25年6月1日に早稲田大学において研究集会「数論女性の集まり」を開催する.世話人として本研究集会を開き,自分の研究結果を発表するとともに,研究内容の情報交換および今後の研究方針について議論を行うため,国内の若手女性研究者を招聘する. 平成25年10月にカナダ国Banffにて,国際研究集会が開かれる.本研究集会において研究成果を発表し,その結果をもとにスタンフォード大学のBump教授およびMIT大学のBrubaker教授と研究打ち合わせを行う. [消耗品] 本研究は,解析数論,表現論,組合せ論,統計物理,シューベルトカリキュラスといった分野間のつながりを明確にするものであるため,それぞれの分野における専門書を必要とする.研究の遂行上,研究計画に沿った各段階において必要となる書物の購入および文献取り寄せを行う.
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