研究課題/領域番号 |
24740026
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
笹木 集夢 東海大学, 理学部, 講師 (60514453)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 可視的作用 / 非対称空間 / スライス / 正規実型 / 複素等質空間 / 球多様体 / カルタン分解 |
研究概要 |
本年度は,以下の内容について研究成果を得た. 1.複素単純リー群の球4対称空間におけるコンパクト実型の可視的作用において,各軌道を保存する反正則微分同相写像の特徴付けを行った.具体的に,複素単純リー群の反正則対合的自己同型で,その微分が複素単純リー環の正規実型となるものを球4対称空間に誘導したものである.複素単純リー環の一般論から,正規実型を実現する反正則対合は共役を除いて一意である.この特徴は,これまでに発見された球複素等質空間における可視的作用の例と共通し,自然なものと考えられる. 2.非管状型の既約な有界対称領域に対して,その複素化を底空間とする直線束として実現されるシュタイン多様体の研究を継続した.これは複素単純リー群の複素等質空間であるが,対称空間ではない.この多様体におけるコンパクト実型の可視的作用において,ある可換群による軌道がこの作用における各軌道と交叉する部分多様体であることを確認した.これは,対称空間に対する可視的作用の理論の一般化と捉えることができる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既約な複素等質空間における可視的作用の分類理論の研究について,ケーリー型とよばれる非対称な球等質空間をさらに精緻に行う必要がある.前述の球4対称空間における可視的作用において,各軌道を保存する反正則微分同相写像を特徴付けたように,ケーリー型においても反正則微分同相写像の存在およびその性質について特徴付けたい.なお,複素単純リー群の球等質空間でケーリー型のものにおいて,コンパクト実型の作用が可視的であることは明らかにしている. また,複素冪零軌道に対する可視的作用に関する論文は完成に近づいてはいるが,投稿までに至らなかった.
|
今後の研究の推進方策 |
研究の方向性については,これまで通り遂行する.本年度は計画通りに進まなかった部分があったのは,本研究を遂行する過程で派生した反正則微分同相の特徴付けの研究にも取り組んだことによる.よって,研究手法に問題ないと判断している. まず,ケーリー型の研究を継続し既約なアフィン複素等質空間に対する可視的作用の研究を完成させる.ケーリー型とよばれる球等質空間は同型を除いて3種類存在することが知られている.これにより,個別に調べ具体的にスライスや反正則微分同相を記述することを通して共通する性質や構造を見いだすことを目指す. 次に,既約でないアフィン複素等質空間に対する可視的作用の研究を実施する.特に,既約な場合に対する研究手法に倣って進めることは有用であると考えている.これは,線型空間に対する可視的作用の研究において,上述の方法が効果的であったからである.
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するために必要な書籍の購入や論文の印刷代,また必要な文具などの物品費,および研究成果の報告や情報収集に必要な旅費に充てる.次年度は,フランスでの研究集会で研究に関する情報収集を行う予定である.また,チュニジアや名古屋での国際研究集会で発表する機会をいただいており,本年度の繰越金と合わせて国際研究集会での発表による旅費に充てる予定である. なお,平成24年度から平成25年度へ助成金の繰越が発生したのは,海外出張の際に購入した航空券の代金が予定額よりも値下がりしていたこと,また既約でないアフィン等質空間に対する研究を遂行するために必要な文献の購入を行わなかったことが理由である.
|