研究課題
本年度は、主に有限複素鏡映群に付随する齋藤構造、フロベニウス構造、混合フロベニウス構造について研究を行った。複素ベクトル空間の自己同型群の、鏡映で生成される有限部分群を有限複素鏡映群という。その軌道空間上に、どのような幾何構造が入るかを考える。有限複素鏡映群が実構造をもつとき(すなわち有限コクセター群の場合)には、軌道空間上にはフロベニウス多様体の構造が入ることが、齋藤らによって示されている。これが一般の有限複素鏡映群の場合にどのように拡張されるかを考える。これについては加藤・眞野・関口による研究があり、有限複素鏡映群が「良い生成条件」をみたす場合には、軌道空間上に齋藤構造が存在することが示されている。そこでこの問題が、「良い生成条件」が満たされない場合にどうなるかを研究した。有限複素鏡映群は、無限個の系列と有限個の例外型の系列の2つに大きく分類されるが、無限系列をなす群については、「良い生成条件」なしに、軌道空間上に齋藤構造が存在することを、被覆空間の議論を使って示した。例外形についても、一つ一つしらみつぶしに調べ、一定の結論を得た。問題を正確に定式化する為に必要となる、齋藤構造に対する概双対生についても研究した。以上の内容については小西由紀子(京大)との共同研究で、論文は現在準備中である。また、種数1のリーマン面の点付きモジュライ空間のコホモロジーに関する、ヨナス・ベルグストローム(ストックホルム大)との共同研究も、昨年度から引き続き、継続して行った。
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PUBLICATIONS OF THE RESEARCH INSTITUTE FOR MATHEMATICAL SCIENCES
巻: Volume 52, Issue 1 ページ: 43-62
10.4171/PRIMS/173