符号,格子,頂点作用素代数という,互いに密接な関係を持つ数学的対象がある.符号から格子及びVOAが構成出来,格子からVOAが構成出来るように,3者は,類似した性質を数多く持ち,例えば最小距離やt-デザインという概念が,それぞれに定義されている.特に符号はもともと情報伝達の手段,効率化を目的に導入された概念であり,実生活にも幅広い応用を持つ.従って3者の分類問題は,実生活への応用上も,数学的にも面白い重要な問題である.本研究の目的は,これら3者の分類に向けて,それぞれの数学的性質(最小距離やt-デザイン)を明らかにし,3者の分類へ貢献する事である. 良い符号からは,5-デザインが構成されることが知られている.では,6-デザインが得られることがあるか,これは自然な問題である.本年度の研究において,多くの良い符号の全てのウェイトの符号語に対して,6-デザインは得られないことを示した. 更に,アイゼンシュタイン級数という基本的な保型形式がある.この有限類似として,アイゼンシュタイン多項式が大浦学氏(金沢大学)により定義された.この2つの対象は構成法から種々の類似した性質を持つと期待され,実際に大浦氏によって発見されている.本年度の研究において,新たな類似性を指摘した.それは,ゼータ多項式との関連を示唆するものであり,今後は,アイゼンシュタイン級数,アイゼンシュタイン多項式及びゼータ多項式の総合的研究を行う計画である.
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