局所環上長さ有限な巡回加群の直和に付随する一般化されたブックスバウム・リム関数(以下、KT関数と呼ぶ)及び重複度(以下、KT重複度と呼ぶ)の具体的な計算を行った。昨年度までの成果を踏まえ、今年度取り組んだ課題とその成果は次の通りである。 1. 加群のKT重複度の計算は、適当な節減をとることで巴系行列に付随する加群のKT重複度の計算に帰着される。1次元コーエン・マコーレー局所環内のパラメータを対角成分にもつ対角行列は典型的な巴系行列である。平成25年度、この特別な巴系行列に付随する加群のKT関数及びKT重複度の具体的計算を実行し、階数が2の場合について詳細な結果を得た。本年度は、この結果を整理し論文として纏め、専門誌に投稿した。 2. 上述した1次元コーエン・マコーレー局所環上の典型的な巴系行列(対角行列)は、長さ有限な巡回加群の直和に付随する行列の特別な場合と見なせる。そこで、一般次元ネーター局所環上長さ有限な巡回加群の直和に付随するKT重複度の具体的計算に取り組み、階数が2及び3の場合に、KT重複度をイデアルの混合重複度を用いて表す公式を得た。これは、Kirby-Reesの公式として知られている巡回加群の直和のブックスバウム・リム重複度公式の類似(KT重複度への拡張)と見なせる。階数が4以上の場合のKT重複度については、本年度実行した計算過程から混合重複度を用いた表示が可能と予想されるが、公式を得るには至っていない。今後の課題である。
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