研究課題/領域番号 |
24740033
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
水川 裕司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 総合教育学群, 准教授 (60531762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 直交多項式 / 有限群の表現論 / 確率論 |
研究概要 |
本年度はまず,有限群のゲルファントペアから得られる等質空間の確率空間としての研究を行った.古典的な物理モデルにエーレンフェストの壺,というものがあるが,これは複数の壺の中に入ったボールをシャッフルしていく確率過程である.古典的な場合,壺同士の相互作用はないものとして解析を行うが,群作用を用いて様々な壺の作用を記述できることを定式化した.例えば,壺の間の相互作用として,円上に配置された壺を考え,取り出したボールは一つ右の壺にしか移動できない,というものを統制するのは巡回群とその単位元からなる部分群のゲルファントペアである.他にも二面体群に関係する相互作用や,小さな例であるが,それ以外の相互作用を与える群の対を与えることが出来た.これらの事実は6月に京都大学で行われた表現論セミナーと7月の名古屋大学,10月の京都大学数理解析研究所で行われた研究集会にて口頭発表した.また,岡山大学の山田裕史教授らと,アフィンリー環の基本表現を用い,シューア関数達のある公式を証明した.これは基本表現と呼ばれる既約表現の異なる実現を考え,その間のボゾンーフェルミオン対応という同型写像を計算することで得られる.これによって得られた公式は二つあるが,一つは長方形型のヤング図形でパラメトライズされたシューア関数と冪和対称関数のプレシズムの公式の表現論的な解釈を完全に与えたことになる.また,もう一つの公式は未知のものだが,これはもう少し途中の計算を整備することで,シューアのQ関数を2被約シューア関数で記述する公式になるはずである.これに関しては現在論文を作成中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有限群の等質空間とエーレンフェストの壺のモデルに関する研究に関しては,その基盤となる群作用による壺の間の相互作用を発見したことにより,今後の研究の道筋がはっきりとしており,さらなる発展が期待できる.しかしながら,有限群のゲルファントペアまたはその類似から新たな直交多項式を見つける事に関しては,十分に研究が進んだとはいえない.ただし,アフィンリー環の表現論より生ずる様々な対称多項式を計算することによって,対称関数の積分表示に関する理解は深めることが出来た.基本的な他変数直交多項式を利用して新たな直交多項式を見つける事は基本的であるから,これは前進した点である.また,ファン・ディーエンのマクドナルド多項式から得られる離散直交多項式の理論を勉強することにより,これの表現論的な解釈を与えることで,目的にアプローチできるという視点を得ることが出来た.
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今後の研究の推進方策 |
まずは相互作用が群で記述できる場合のエーレンフェストの壺のモデルの解析を完了したいと思っている.群が与えられるごとに青本ーゲルファントの超幾何関数を用いた他変数クラウチャック多項式を用いた全変動距離の評価をうまくやりたい.相互作用なしの場合には北海道大学の洞氏による先行研究があるため,それの多変数化をうまく行うことで達成できると信じている.また,引き続き有木ー小池代数によって与えられる直交多項式を確定する研究を行いたい.これにはファン・ディーエンの研究を取り入れる事によって,新たな局面を迎えることが出来るのではないかと考えている.また,今年度までに得られた知見をもう一度整理し,すでに結果として確立されたものは発表などをしていくことで,さらなる知見が聴講した研究者より得られるかもしれない.そして,このような研究を行うには幾人かの研究者を招聘したり,訪ねていったりすることで専門知識を得る事が必要である,また,関連するテーマの研究集会に参加し,そこで意見の交換や知識の収集に努めることも重要である.
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次年度の研究費の使用計画 |
6月末にフランス,パリで行われる第25回FPSACへの参加,および高性能デスクトップパソコンの購入を予定している.ほかに,9月末に愛媛大学にて行われる日本数学会への参加やいくつかの研究集会への参加,関連書籍の購入と何名かの国内研究者の招聘を予定している.
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