本年度は,アフィンリー環の基本表現から生ずるシューア関数の関係式に関する論文を作成し,さらに,受理の上掲載された.この論文では,前年度までに得られた公式と,さらに長方形のヤング図形でパラメトライズされるシューア関数と,新たに発見した階段型のヤング図形でパラメトライズされるシューアのQ-関数との関係を明らかにした公式を与えている.これは表現論と,対称関数の直交性などをうまく使うことでなされたため,本研究の趣旨と十分にマッチしたものである.また,整数の分割について,ジェームスやオルソンによって研究された,整数nを固定した時,nの全分割の和因子の積と各分割の重複度の積の間に成り立つ関係式について,その一般化を与えた.さらに,この事について岡山大学の山田裕史とプレプリントを作成し,関連することも含め,いくつかの口頭発表を行った.具体的には,どの二つも互いに素であるような整数の組に対して,それらの倍数を含まないような分割全体を考えると,それらの全分割の和因子の積と各分割の重複度の積の間にはある母関数から決まる定数倍の差しかないということを発見した.これもまた,群の指標と対称関数の直交性が本質的である.特に,ホール・リトルウッド対称関数の一の冪根での特殊化が重要になってくる.さらに,直交多項式の一つである多変数クラウチャック多項式がキーとなる,壷とボールのモデルにおいて,前年度までに得られた評価式を精密化することを試みた.その結果ある程度は精密化することが出来たが,これに関してはもう少し改良ができるのではないかと思っている.
|