研究概要 |
曲面の写像類群の元のなかで一般的なものは, 擬アノソフ写像類である. 擬アノソフ写像類の写像トーラスは完備双曲構造を許容する. 従って写像トーラスの双曲体積は擬アノソフ写像類の不変量となる. 擬アノソフ写像類はエントロピーというもう1つの不変量を持つ. 曲面 S を固定すると, S上の擬アノソフ写像類のエントロピーの集合には最小値 L(S) が存在する. 一方, 3次元双曲ファイバー多様体Mのfibrationのモノドロミーは擬アノソフである. 従ってMのfibrationごとに擬アノソフの(位相的)エントロピーが定まる. さらにMの第2ベッチ数が2以上であるとき, M は(ファイバーのトポロジーが異なるような)無限個のfibrationを許容する. よって多様体Mから擬アノソフ写像類の無限族が得られる. これまでに本研究では, マジック多様体(これをNとおく)とよばれる1つのファイバー双曲多様体に対して, fibration のエントロピーを組織的に調べた. 最小エントロピーを実現することが既に決定されている写像類や, あるいは知られている例の中で最小のエントロピーを持つ写像類は, NをDehn fillingして得られる円周上の曲面束のfibrationのモノドロミーになることが, 本研究で示されている. エントロピーが小さいという意味で重要な写像類を生み出すマジック多様体のファイバーのモノドロミーであるが, 写像類としてがどのような``形”をしているのか, これまでに知られていなかった. 本年度の実績は以下である: 1. Nの各のfibrationの擬アノソフモノドロミーを具体的に記述した. 2. さらに, 擬アノソフに付随する train track map を具体的に記述した.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが, 研究計画に変更はなく, 前年度の研究費も含め, 当初予定通りの計画を進めていく. 平成24年度研究費の未使用額は, 平成25年度に専門書の購入に充てる予定である.
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