研究課題/領域番号 |
24740040
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
逆井 卓也 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (60451902)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 位相幾何学 / グラフホモロジー / モジュライ空間 / ホモロジー同境 |
研究概要 |
Kontsevich のグラフホモロジーの理論における,自由結合代数,自由リー代数,自由可換代数のそれぞれの場合のシンプレクティック微分リー代数のホモロジーについて,森田茂之氏,鈴木正明氏との共同研究の中で,シンプレクティック群の表現論を用いてチェイン複体の構造を調べ,複体のオイラー数をウェイトの低い方から順番に決定していった.その系として,自由可換代数の場合には3価グラフのみでは得られない非自明な奇数次のグラフホモロジー類が,自由リー代数の場合には自由群の外部自己同型群について非自明な奇数次の有理コホモロジー類がたくさん存在することが証明できた.後者の結果について,非自明な奇数次の有理コホモロジー類の存在はこれまでに知られていなかったことである. また,自由結合代数の場合においては,Gorsky による穴あきリーマン面のモジュライ空間の同変オイラー数の理論を利用ならびに整理して計算を行い,そのオイラー数が漸近的に興味深い振る舞いをすることを観察した. 自由リー代数の場合には,シンプレクティック微分リー代数のアーベル化の決定と,次数1部分が生成する部分リー代数の決定が大きな問題となっている.とくに後者は Johnson 準同型の像の決定問題と言うこともでき,曲面の写像類群の研究の観点からも重要である.どちらの問題についても,具体的な計算を通じて,次数6までの構造を完全に決定することができた. 曲面のホモロジー同境のなす群については,これまでに得られた結果をまとめたサーベイ論文を発表した.この中にはいくつかの未発表の結果も含まれている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複体のオイラー数を通じて,自由可換代数や自由リー代数の場合にこれまでに知られていなかったタイプのグラフホモロジー類の存在が証明できたことは当初想定していなかったことであったが,重要な結果であると位置づけている.これに比べて,自由リー代数の場合のグラフのリー代数の構造については次数6まで完全に決定することができたが,当初の予定では次数7や8の部分にまで取り組むこととなっており,この部分については遅れをとっている.オイラー数によるアプローチを新しく得たという現状を加味し,こちらの進め方については今後再検討していく必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
自由リー代数に対応するグラフのリー代数の構造について集中的に取り組む.具体的な構造については本年度の次数6までの計算に引き続き,より高次の場合の調査を進める.並行して,オイラー数の計算で得られた情報をもとに,実際のホモロジー類の構成に取りかかる. 曲面のホモロジー同境群の構造については,以前に G.Massuyeau 氏と共同で開発した「無限小トレース準同型写像」の精密化について,彼との直接的な議論を通じて進めていく.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,オイラー数の計算という,当初は想定していなかった方法を中心に研究を進めるかたちとなり,とくにスーパーコンピュータの利用を行わなかった,その利用のための予算を使用しなかったことにより,今年度の使用額が予定よりも少なくなった.また,洋書が安価に調達できたということも使用額の抑制につながっている. 本年度の使用目的と同様に,次年度についても研究発表や資料収集のための出張旅費や専門書の購入が主な使用目的となる.出張旅費については,2014年2月にドイツの Oberwolfach の研究所で開催される研究集会の主催者から招待を受けており,それに参加するための旅費として使用する予定である.
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