研究課題/領域番号 |
24740042
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高津 飛鳥 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (90623554)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 測度距離空間 / 曲率次元条件 / 等周不等式 / 測度の集中現象 |
研究概要 |
本研究の目的は幾何構造の基礎概念である距離と体積の関係を明らかにすることである. 特にリーマン多様体上の測度に対して, 距離関数と測度の関係を表す2つの評価,測度集中不等式と等周不等式の関係を曲率次元条件を用いて考察することが念頭にある.ここで測度集中不等式は測度が全測度の半分以上である集合の近傍測度を集合からの距離で下から評価する不等式, 等周不等式は集合の周長を集合の測度による関数で下から評価する不等式である. 曲率次元条件は測度距離空間のリッチ曲率の下限・次元の上限を意味する条件である.一般に,測度集中不等式は等周不等式より弱い評価である. 今年度はユークリッド空間上のルベーグ測度に絶対連続かつ回転対称である確率測度の等周不等式に関する考察を与えた(arXiv:1212.6851参照).証明の鍵はポアンカレ極限と呼ばれる球面上の一様分布を用いたガウス測度の近似の一般化である.この結果により,ガウス測度のリプシッツ写像による押出測度となる回転対称な確率測度がガウス型の等周不等式が満たすことが分かった.この結果自体は既知であったが, 本研究では既存の結果より良い評価を与えることが出来た.さらにこの証明はこのような確率測度に対してはガウス型の等周不等式が最適でないことを示唆し,さらに一般にガウス型の等周不等式を考える際には指数関数の特徴を使うが本証明では指数関数の特徴を用いていないため,本研究を深めることによって新しい等周不等式の導出が期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の目的はある曲率次元条件を満たす重みつき多様体上の適切な確率測度に関してどのような等周不等式が成立つか考察することであった.そしてそのためにE.Milmanの手法を一般化することが目的の一つであり, そのためにはHeintze-Karcherの定理を拡張することが求められた.この一般化ができていないため申請書に記載した「研究の目的」は達成できていない点が多い. その一方で,申請時には考えていなかった方法に気付き研究実績の概要で述べた結果,ユークリッド空間上のルベーグ測度に絶対連続かつ回転対称である確率測度の等周不等式に関する考察を得ることが出来た.また, 11月に参加したERC Workshop on Optimal Transportation and Applications (イタリア)でN.Gozlan氏と議論したことにより, 関数不等式を経由したE.Milmanとは違う手法を用いた証明の可能性が芽生えた. 以上のように交付申請書に記載した「研究の目的」は達成していないが,申請時には考案していなかった手法が着想できた.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きある曲率次元条件を満たす重みつき多様体上の適切な確率測度に関してどのような等周不等式が成立つか考察する.例えば初年度に達成できなかったHeintze-Karcherの定理を一般化し,それに付随する事象を明らかにする.また,「現在までの達成度」で記したように申請時には考案していなかった手法をも明らかにする. そしてこれらを用いてある曲率次元条件を満たす重みつき多様体上の適切な確率測度に対する等周不等式・測度集中不等式の同値性を考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研修の推進方策にあるよう,曲率次元条件を満たす重みつき多様体上の適切な確率測度に関する研究を進める.その際に研究集会に参加し,参加者と議論を進めることで最先端の新しい知見を得ることを試みる.
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