研究課題/領域番号 |
24740043
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
植田 一石 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60432465)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ミラー対称性 / ダイマー模型 / 深谷圏 |
研究概要 |
ダイマー模型に関する広島大学の石井亮氏との共同研究を継続、発展させた。特に、ダイマー模型に付随した関係付き箙の安定な表現のモジュライ空間が、安定性を変えた時にどう振る舞うかを詳しく調べることにより、同語反復的直線束がある安定性に対して傾対象であれば、一般の安定性に対してもそうであることを示した。このことから、導来圏の同値としてのMcKay対応の新しい証明が得られる。 また、石井亮氏及びニューヨーク大学ストーニーブルック校のCharlie Beil氏と共同で、ダイマー模型の整合化に関する研究も行った。ダイマー模型がよい性質を持つためにはそれが整合性条件と呼ばれる条件を満たすことが必要であるが、我々は任意のダイマー模型に対して、それに適当な操作を行うことによって、特性多角形と呼ばれる量を変えずに整合性条件を満たすようなダイマー模型を得ることが可能であることを示した。 さらに、香港大学のKwokwai Chan氏と共同で、A型の単純特異点に対するホモロジー的ミラー予想を証明した。ホモロジー的ミラー予想はKontsevichによって1994年の国際数学者会議で提唱された予想で、ある空間の連接層の導来圏とそのミラーと呼ばれる別の空間の深谷圏の導来圏が三角圏として同値であることを主張する。この予想はコンパクトな台を持つ連接層の導来圏に対しては筆者の修士論文で示されたが、台がコンパクトとは限らない連接層に対しては、Pascaleffによる最近の進展を用いることにより、当該年度の研究によって初めて証明された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記した「研究の目的」は、ミラー対称性に関わる様々な予想の中で最も重要かつ困難なものの一つであるKontsevichのホモロジー的ミラー予想について、さまざまな側面から研究を行い、その背後にある幾何学への理解を深めることであった。 当初の平成24年度の研究実施計画に記したダイマー模型の高次元化については大きな進展はなかったが、平成24年度の研究実績の概要に記した通り、当初の研究計画とは少し異なるが、研究の目的には沿った方向で、当初想定していなかったかなりの進展があった。従って、「研究の目的」の達成度については、概ね順調に進展していると言える。
|
今後の研究の推進方策 |
香港中文大学のKwokwai Chan氏及び東京大学数物連携宇宙研究機構のDaniel Pomerleano氏と共同で3次元の通常二重点に対するホモロジー的ミラー予想を証明する。平成24年度に行ったChan氏との共同研究において2次元のA型単純特異点に対するホモロジー的ミラー予想を証明するのに用いた手法が3次元の通常二重点に対しても適用出来るのではないかということがPomerleano氏によって指摘されたので、その方向で研究を行う。 また、トルコのGalatasaray大学の田邊晋氏と共同で、ミラー対称性を応用した超幾何級数のモノドロミーの研究も行う。特に、射影空間の中のCalabi-Yau超曲面のミラーの周期積分が満たす微分方程式について、その解のモノドロミーが、周期積分から来ないものも含めてもとの射影空間のCalabi-Yau超曲面の連接層の導来圏と関連していることを示す。 さらに、韓国高等科学院の橋本健治氏および東京大学の三浦真人氏と共同でK3曲面に対するミラー対称性の研究も行う。特に、可逆多項式に付随するK3曲面に対するミラーを構成する手法としてはBerglund-Huebschによる転置ミラー構成、Batyrevによる反射的多面体を用いた構成、それにHori-Vafaによる構成などが知られているが、これらの間の関係を詳しく調べたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
9月の1日から7日にドイツのOberwolfach数学研究所で行われる"Matrix Factorizations in Algebra, Geometry, and Physics"という研究集会に参加し、研究発表や関連研究者との情報交換、研究打ち合わせなどを行う。また、11月の21日から24日にトルコのGalatasaray大学で行われる"Japanese Turkish Joint Geometry Meeting"にも参加し、研究発表や関連研究者との情報交換、研究打ち合わせなどを行う。さらに、その他にも国内外の研究者と研究打ち合わせをするための旅費を支出する。また、ミラー対称性に関わる書籍の購入も行う。
|