研究課題/領域番号 |
24740044
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
川上 裕 山口大学, 理工学研究科, 講師 (60532356)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 幾何学 / 関数論 / 複素解析学 / 幾何解析 |
研究概要 |
本年度は、主に2つのテーマの研究について進展があった。1つは、ガウス写像の除外値数の上限の幾何学的意味を明らかにしたことである。複素平面上の非定数有理型関数の除外値数の上限である“2”の幾何学的意味は、その値域であるリーマン球面のオイラー数であることが知られている。一方、3次元ユークリッド空間内の平面でない完備極小曲面のガウス写像の除外値数は藤本坦孝氏によって“4”であることが示されたが、その幾何学的意味はわかっていなかった。また、申請者は中條大介氏との共同研究によって、楕円型放物面でない弱完備な非固有アファイン波面のラグランジアンガウス写像の除外値数の上限は4より小さい“3”であることを示した。そこで、申請者はこれらの除外値数の上限を統一的に導き、かつ幾何学的意味を明らかにするため、その曲面の等角計量に着目し、その計量のガウス曲率の評価を証明することができた。また、その計量が完備である場合は、ガウス写像の除外値数の上限は(計量のオーダー)+(値域であるリーマン球面のオイラー数)で与えることができることを示した。このことから、ガウス写像の除外値数の上限の幾何学的意味、及び曲面のクラスのベルンシュタイン型定理が生じる幾何学的背景を明らかにすることができた。もう1つはウイルモア予想の解決と極小曲面論との関係を理解することができたことである。今年度は3次元球面内の極小曲面論において未解決とされていた問題が次々解かれ、大きく研究が進展した年であった。申請者はその中で、ウイルモア予想と極小曲面論との関係を記したMarquesとNevesの論文を熟読し、そのことを国際講演や研究集会で発表した。この内容で申請者はまだ研究成果を得ていないが、今後の幾何学の研究の進展において非常に重要な概念になることは間違いなく、いずれはこの内容を活かした研究成果を得たいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に目標としていた内容を達成でき、さらにその成果は発展性に富んだものとなり、今後の研究の進展も期待できそうだから。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度得られた成果を、より次元の高いユークリッド空間内の極小曲面のガウス写像の値分布論にも応用していきたいと考えている。また、これまで世界的に研究が進展していなかった、向き付け不可能な極小曲面のガウス写像の研究にも着手したいと思う。そして、九州大学の小磯深幸氏との共同研究で、非等方的平均曲率一定曲面のクラスのベルンシュタイン型定理及び剱持-ワイエルシュトラス型表現公式の研究も進めていきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究成果発表及び小磯深幸氏との共同研究の研究打ち合わせのための旅費として研究費を使用する予定である。また、本研究の内容は幾何学、函数論両分野の他の研究課題にも応用することが期待できるので、このことに関する勉強会や研究集会の会議費、研究打ち合わせのための旅費としても使用したいと考えている。さらに、最新の知見を得るための図書の購入にも使用したいと考えている。
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