研究概要 |
当該年度では前年度までの研究で得られた,Gromov-Hausdorff収束の枠組みにおけるLp収束の理論を用いて,Cheeger等周定数とp-LaplacianとGromov-Hausdorff収束の間の関係を与える論文「Cheeger constant, $p$-Laplacian, and Gromov-Hausdorff convergence」をarXiv上に発表した(arXiv:1310.0304,現在投稿中).その主結果は粗く言って,p-Laplacianの第一固有値の1/p乗を考えたとき,pを1に近づけると,Cheeger等周定数が現れ,pを大きくすると直径の逆数の2倍が空間の変動も許して現れる,というものである.その系として,新しいp-Laplacianの第一固有値の評価が得られた.その評価は指数pによらない点が本質的であり,従来のp-Laplacianの固有値評価の研究の方針とは大きく異なり,直接p-Laplacianの方程式を扱うPDE的な難しさをGromovのコンパクト性定理と特異空間上の幾何解析を用いてかわしている点がアピールポイントの一つである.別の応用として,古典的によく知られている直径球面定理,固有値に関する球面定理,等周不等式に関する球面定理の間の関係を,p-Laplacianの第一固有値を用いて連続的に与え,かつそれをGromov-Hausdorff極限空間にまで拡張した.その系として,それらの球面定理のquantitative版を示し,Cheeger-Coldingによる懸垂構造定理の非線形版を与えた.
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