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2014 年度 実施状況報告書

周期的極小曲面の微分幾何学的モジュライ理論の研究

研究課題

研究課題/領域番号 24740047
研究機関佐賀大学

研究代表者

庄田 敏宏  佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (10432957)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード周期的極小曲面 / Morse指数 / 退化次数 / 面積最小
研究実績の概要

平成26年度は研究面と共に研究交流にも主眼をおいた。研究面においては,前年度までの研究を継続し,3次元ユークリッド空間内の三重周期極小曲面のMorse指数の研究を行い,さらに行き先の空間の次元を上げて4次元ユークリッド空間内の四重周期極小曲面のMorse指数の研究を行った。以上は名城大学の江尻典雄氏との共同研究に基づくものであり,学術論文としてまとめる作業も行うことができた。近日中に投稿予定である。さらに,3次元ユークリッド空間内の三重周期極小曲面の退化に関する研究を,名城大学の江尻典雄氏,岡山大学の藤森祥一氏らと行った。1990年代にMeeksが構成した極小曲面の変形族を退化させたときの振る舞いを調べたものである。Meeksの変形族は物理や化学で研究されている三重周期極小曲面を多く含んでいる,由緒正しい変形族であるが,それらを退化させた場合,周期性が崩れて二重周期極小曲面や一重周期極小曲面などが現れるという成果を得た。
研究交流においては,九州大学の小磯深幸氏の仲介で,ソフトマターの専門家とのディスカッションの機会を得た。ソフトマターの世界では三重周期極小曲面が頻繁に現れており,様々な観点から研究が進められているという情報が得られた。特に,三重周期極小曲面の膜の温度を変化させると,ラメラという二重周期極小曲面や一重周期極小曲面が現れるという結果が実験によって示されており,ソフトマターでのそうした現象と,上述の我々の研究成果がマッチするということも判明した。これからもソフトマターの研究者らとディスカッションを行っていく重要性を実感することができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度までの段階で既に当初の研究計画を上回る成果をあげていた。実際,本研究はこの20年以上,世界的に停滞していた内容であり,しかし,自然現象を数学で解明する重要な内容ゆえの難解さが極めて強いものであり,そこに一石を投じた研究成果であった。
今年度はさらにその先を考察したものである。具体的には,三重周期極小曲面の退化に伴う変化を解明したものであるが,退化の結果,1980年代や1990年代に発見されてきた二重周期極小曲面や一重周期極小曲面の具体例が現れるということが特定された。先駆者たちの具体例が如何に重要かを再認識する機会にもなったが,それ以上に,ソフトマターの世界で頻繁にみられる現象と我々の研究成果がマッチするということが判明した。確かに古典的なPlateau問題に見られるように,極小曲面は物理現象とマッチすることはよく知られていたことではあるが,現代の物理学でもそうした数学での現象と物理学での現象とがマッチするということは当初の予想をはるかに越えた結果であった。今後,他分野との研究打合せの重要性を感じることもでき,非常に大きな成果であった。

今後の研究の推進方策

次年度の課題は,現在の研究のさらなる継続を前提とし,さらに面積最小性に関する研究を進めていきたい。ここ数年で,面積をさらに減らす方向の個数を表すMorse指数を特定することに成功してきた。次は,与えられた曲面の体積保存安定性に取り組みたい。これは曲面の変形で,その曲面が囲う体積を一定にするようなものを考えたとき,そのような変形の中で面積が最小の曲面かどうかを問うものである。自然現象は何らかの安定性を確保するため,安定な状態に変形しようとする。この安定性を数学的に解釈したものが,体積保存安定性の概念である。この研究に関してもこの20年間,大きな進展は見られなかった。そこで最終年度として,これまでMorse指数を特定してきた曲面の変形族の体積保存安定性を考察したい。また,それと並行して,ソフトマターの研究者らとの研究打合せをさらに促進させ,数学サイドの安定性と物理サイドの安定性との共通点と相違点を探求していきたい。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] On a moduli theory of minimal surfaces2014

    • 著者名/発表者名
      庄田敏宏,江尻典雄
    • 雑誌名

      Prospects of Differential Geometry and its related fields

      巻: 1 ページ: 155, 172

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A family of complete minimal surfaces of finite total curvature with two ends2014

    • 著者名/発表者名
      庄田敏宏,藤森祥一
    • 雑誌名

      Differential Geometry of submanifolds and its related topics

      巻: 1 ページ: 19, 31

    • 査読あり
  • [学会発表] On zero eigenfunctions of Jacobi operator on a minimal surface2014

    • 著者名/発表者名
      庄田敏宏
    • 学会等名
      4th International Colloquium on Differential Geometry and its Related Fields
    • 発表場所
      Veliko Tarnovo University (Bulgaria)
    • 年月日
      2014-09-10 – 2014-09-10
    • 招待講演
  • [学会発表] The existence of non-holomorphic hyperelliptic minimal surfaces in flat 4-tori and their Morse indices2014

    • 著者名/発表者名
      庄田敏宏
    • 学会等名
      The 5th International Workshop on Differential Geometry and Analysis
    • 発表場所
      虹ノ松原ホテル
    • 年月日
      2014-06-01 – 2014-06-01
    • 招待講演

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公開日: 2016-06-01  

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