研究課題
本研究は,Euclid空間内の周期的極小曲面全体のモジュライ空間を,微分幾何学的に解明することを趣旨とするものであった.具体的には,極小曲面のMorse指数を通して,物理や化学で考察されてきた極小曲面の変形族の振る舞いを記述することをメインとするものである.Euclid空間内の周期的な極小曲面は,界面活性剤などの高分子の膜を電子顕微鏡で見たときに現れるもので,自然現象と大きな関わりがあると見られてきた.一方,微分幾何学においては,面積・体積が最小になるような図形に何らかの重要性があるという見解があり,その図形が面積・体積最小性からどれくらい離れているかを調べる量としてMorse指数の研究がなされてきた.今回の研究期間において,名城大学の江尻典雄氏との共同研究によって,様々な変形族のMorse指数を数値計算を用いて決定することができた.また,余次元が高い場合の極小曲面のMorse指数の研究も進めることができた.実際,4次元Euclid空間内の四重周期極小曲面で,超楕円型曲線の構造をもつものは種数が奇数の場合しか具体例が知られていなかったのであるが,今回,偶数種数の具体例の存在を示してそのMorse指数を計算することができた.これも想定外の研究成果であった.さらに,岡山大学の藤森祥一氏にも研究に加わってもらい,三重周期極小曲面の極限に関する研究も進めることができた.実際,Meeksによって構成された変形族の極限として,Rodriguezによって構成された例が現れるという結果を得た.一方,本研究から派生した別の課題として,藤森氏との共同研究によって,3次元Euclid空間内の全曲率有限完備極小曲面の存在を示し,しかもその曲面のもつ対称性から一意性を示すことにも成功した.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
Pacific Journal of Mathematics
巻: 282 no.1 ページ: 107--144
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Topology and its Applications
巻: 196 ページ: 880--903
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http://extwww.cc.saga-u.ac.jp/~tshoda/shoda-home-j.html