研究課題/領域番号 |
24740051
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
佐藤 隆夫 東京理科大学, 理学部, 講師 (70533256)
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キーワード | 自由群の自己同型群 / Johnson準同型 / Fricke指標 / IA自己同型群 / 曲面の写像類群 / Torelli群 |
研究概要 |
本年度は,Andreadakis-JohnsonフィルトレイションとIA自己同型群の降中心列が一致するかどうかという研究を中心に行った.研究方法としては,IA自己同型群のMagnus生成元の間の関係式を用いて,降中心列の各次数商の生成元を減らし,降中心列に付随するJohnson像の次元に一致させることができるかという初等的な組み合わせ群論及び線型代数による直接的なな手法である. 現在,IA自己同型群の表示は決定されておらず,Magnus生成元の関係式の構造は極めて複雑である.今回,かなり多くの計算を行い,Magnus生成元を成分とする交換子たちの間の関係について理解が深まったが,Andreadakis予想の完全な解決には未だ至っていない.一方で,それまでに得られた計算結果から,ある部分群に制限すると議論が著しく簡易化されることが分かった.即ち,自由群のアーベル化への作用が上三角行列の作用として表されるような自己同型たちの成す群を上三角自己同型群と呼ぶとき,上三角自己同型群とIA自己同型群の共通部分に関して,Andreadakis予想を肯定的に解決することができた.現在は,どのように自由群の自己同型群全体に議論を拡張するか研究中である. 一方で,自由群のFricke指標環に関していくつかの進展があった.これまでに,Johnson準同型のFricke指標版というべき準同型写像を構成し,その性質(Andreadakis-Johnsonフィルトレイションとの関係など)を調べていたわけであるが,今回,曲面の写像類群における森田茂之氏の結果を参考にすることで,第1準同型を自由群の自己同型群全体にcrossed homomorphismとして拡張することができた.今後は,自由群の自己同型群のコホモロジーとの関係を詳しく研究していきたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に行った計算により,自由群のIA自己同型群のMagnus生成元を成分とする高次の交換子たちの間の関係について多くの計算結果を通して理解が深まった.Andreadakis予想への完全な解決には未だ到達していないが,Andreadakis予想が肯定的に成立する部分群を見出し,かつそれを示すことができたことには一定の成果が得られたと考えている. 一方で,自由群のFricke指標環に関する研究においても,第1準同型の自由群の自己同型群全体へのcrossed homomorphism としての拡張に関する結果が得られ,元々のJohnson準同型の理論との比較研究が比較的容易に進行することがまた一つ確かめられた.これにより,今後のより深い研究(特に,高次元のコホモロジー群との関係)に対しての意欲が湧き,研究のさらなる進展に期待が持てる状況となった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに行った多くの計算を通して,IA自己同型群のMagnus生成元の間の関係式の構造に関する理解深まったが,Andreadakis予想を解決するためには,これまでの計算手法に固執するのではなく,新たな観点からの研究も進めていくことが重要なのではないかと強く感じている. 現在,自由群の普遍表現環のあるイデアル降下列の次数商への,自由群の自己同型群の作用を研究することで,Andreadakis-Johnsonフィルトレイションとの関係性が明らかになりつつある.この理論は,自由群のFricke指標環のに関する研究をある意味で簡易化させたものであり,比較的扱いやすいものである.そこで,まずは自由群の普遍表現環におけるJohnson-森田理論を再構築し,Andreadakis-Johnsonフィルトレイションの各部分群の作用がどのようなものであるかを明らかにしていきたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
助成金の残高は2万円程度であり,本年度の所要額はほぼ順調に執行することができた.残額は次年度必要になる旅費や消耗品費に割り当てたいと考えているから. 旅費及び消耗品費に割り当てる.
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