研究実績の概要 |
本年度は,自由群のSL(m,C)表現から定まる環の構造に関する研究を中心的に行った.これは,前年度に行った,自由群のSL_2普遍表現環に関する研究の一般化である. 自由群のSL(m,C)表現全体のなす集合上の複素数値函数全体のなす環において,表現の行列の各成分とる函数たちで全体生成される部分環を考える.すると,この環には自由群の自己同型群が自然に作用し,あるイデアルたちの降下フィルトレイションが定まる.まず,このイデアル列の次数商のGL加群として構造を決定した. 次に,イデアル冪零商に自明に作用するような自由群の自己同型たちのなす部分群は,自由群の自己同型群に中心的降下列を定める.この降下列が,次数ごとにAndreadakis-Johnsonフィルトレイションを含むことを示した.特に,次数が低い部分では両者は一致することがわかり,すべての次数で一致するのではないかという予想の下,研究を進めている. さらに,降下列の各次数商の構造を調べるために,Johnson準同型のSL(m,C)表現類似物を構成し,特に,森田茂之氏の写像類群に対する先行研究を参考に,第1準同型が自由群の自己同型群全体に斜準同型として拡張するという結果も得られた.
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