研究課題/領域番号 |
24740054
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄央 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (10528425)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / 感染症モデル / パーコレーション / ワクチン / 相転移 / 臨界現象 |
研究概要 |
1. 複雑ネットワーク上の感染症動態の基礎的な性質を知るため、解析が容易でかつ感染症の近似モデルとして見なせる (ボンド)パーコレーションの振舞いとネットワーク構造の関係を調べた。様々なネットワーク上のパーコレーションの相転移を解析計算と数値計算を用いて調べた結果、以下の研究成果を得ることができた: (1) 数学的な議論の延長から、双曲性と特殊な自己相似性の二つのグラフの性質によってパーコレーションの相図を分類することができることを発見した。(2) 階層的なネットワークモデル上のパーコレーションについて繰り込み群のアプローチによる解析を行った。結果、non-planar Hanoi networkと呼ばれる階層的なネットワークでは秩序相が存在しないことを示した。 2. 次数相関をコントロールできるネットワークモデル上の感染症モデル(SIRモデル)を考え、次数相関と感染症の拡がりやすさ、ネットワークの頑健性(非感染状態の頂点で構成されるネットワークの大域的な繋がりを保つ度合い)の関係について、数値計算を用いて検証した。結果、次数相関が正であるほど感染症の拡がりやすいこと、一方で正負どちらの次数相関であっても相関があるほどネットワークは頑健になることを明らかにした。 3. 通常の感染症モデルに新たな中間状態を加えた情報伝播モデルを提案し、単純なネットワーク上の振舞いを調べた。ツリー近似による解析の結果、中間状態が追加されたことで、このモデルは通常の感染症モデルとは異なり不連続転移を起こすことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関して、本年度4編の論文を出版することができた。特にパーコレーションに関する成果については、3件の国際ワークショップの招待講演を含む多くの成果発表の機会を持ち、広く聴衆にアピールすることができた。また、感染症モデルについても国内学会で幾度か講演を行う段階まで研究を進展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、前年度の研究成果を順次論文誌に投稿、発表する。並行して、今年度予定していた複雑ネットワーク上の感染症動態に対するワクチン戦略研究を始める。最初に重み付きネットワークにおけるワクチン戦略の評価方法についての研究を進める。次に、時間依存性を取り入れたワクチン戦略手法についての検討を始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた計算機購入を次年度に延期することによって生じたものであり、延期した計算機購入に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。今期は北海道大学根本幸児准教授、静岡大学守田智准教授、国立情報学研究所高口太朗氏との研究打ち合わせのための旅費を多めに必要とし、250000円使用する。また、研究成果発表のための旅費として350000円必要とする。
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