研究課題/領域番号 |
24740054
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 雄央 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (10528425)
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キーワード | 複雑ネットワーク / 感染症モデル / パーコレーション / ワクチン / 相転移 / 臨界現象 / モンテカルロシミュレーション |
研究概要 |
複雑ネットワーク上の感染症の振舞いを知るためには、その近似モデルと見なせるパーコレーションの振舞いを調べるのが良い。また、パーコレーションを調べることによって感染症に対するワクチン効果についての知見が与えられる。複雑ネットワークのパーコレーションに関して今年度出版した論文では、以下の研究成果が得られた。1. 複雑ネットワーク上のパーコレーションの転移点、臨界指数を数値的に評価するために、従来の有限サイズスケーリング手法を拡張したスケーリング解析手法を提案した。2. 階層的なネットワーク上のサイトパーコレーションを計算し、パーコレーション閾値が1であることを示した。これはグラフが階層的ないしコミュニティ的に構成されている場合、ランダムにワクチンを配分すれば感染症を抑えることができることを示唆する結果である。 効果的な感染症対策として、オブザーバーを配置することを提案、その効果を調べた。ネットワーク中のノード(人に相当)の一部がオブザーバーの役割を担う。オブザーバーは周囲の限られたエリア(隣接ノード)を監視・担当し、エリア内で感染症に感染したノードが発見された際、担当しているエリアのノードに対策を促し感染症にかからないようにさせる。このような役割のオブザーバーをネットワーク中に入れた場合に感染症は既存のワクチン配分に比べてどの程度抑えられるのか、効率的なオブザーバーの配置はどのようなものになるか、といった問題について主に数値計算を使って検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パーコレーションモデルの研究を通じて複雑ネットワークにおける相転移を数値的に評価できるスケーリング解析手法を提案することができた。提案手法は複雑な感染症の数理モデルへ拡張することが期待でき、今後の数値計算研究を促進する。また、今一つの研究課題とした動的なワクチン対策についても、オブザーバー配置という単純な設定において、感染症対策としての性能を評価した。次年度はより詳細な研究に移行することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
予定していた時間依存性を取り入れたワクチン摂取過程をネットワーク上の感染症数理モデルに取り入れ、その効果について数値的に評価する研究を行う。また、これまでに得られた研究成果、及び現在取りかかっている研究について順次論文誌に投稿、発表していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は解析的な研究が中心であり、数値計算の比重があまり大きくなかったため追加の計算機購入が後回しとなった。また、次年度アピール性の高い国際学会があり、そちらの会議への参加に費用をまわすことを検討した結果、次年度使用額が生じた。 まず、次年度比重が高くなる数値計算の研究を円滑にすすめるべく計算機を購入する。計算機と周辺機器の購入で約50万円を予定する。また、研究成果を速やかに論文にまとめるべく、各共同研究者との研究打ち合わせのための出張を多めに行う他、研究発表のための出張を行う。旅費は70万円を予定する。研究成果のアピール度をあげるため、論文投稿時には英文校正を依頼する。次年度は約15万円を予定する。
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