研究課題/領域番号 |
24740056
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
鈴木 有祐 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10390402)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 最適1-平面グラフ / 三角形分割 / 四角形分割 / 二部グラフ / 外1-平面的グラフ / 線形時間アルゴリズム |
研究実績の概要 |
平成26年度には,P. Eades教授(シドニー大学)のグループとの共同研究の結果を進展させまとめた論文``A linear-time algorithm for testing outer-1-planarity''が,専門誌Algorithmicaに受理されている.この論文の中では,与えられたグラフが外1-平面的であるかどうかを線形時間で判定できるという事実が証明されている. また,継続的に行ってきた1-平面的グラフの辺数に関する研究では,グラフを二部グラフ的なものに限り,その辺数の上界を得ることに成功した.(頂点数V>3の1-平面的二部グラフの辺数の上界は3V-8である.またこの上界は最善である.)現在は1-平面的三部グラフの辺数の上界を得るべく研究を継続中である.この問題に関しては,三部グラフまで調べることが本質的であることもわかっている. さらに慶応大学の野口氏との共同研究では,最適1-平面グラフ,球面の三角形分割及び四角形分割の関係を調べ,いくつかの定理を証明した.その中で主なものの主張は,6頂点以上の球面四角形分割は,辺を追加することにより4-連結三角形分割に拡張可能である,というものである.またその系として,最適1-平面グラフは4-連結三角形分割を全域部分グラフとして含む,という事実も示すことができる.(この結果を用いることにより,「任意の最適1-平面グラフがハミルトンサイクルを持つ」という事実の簡潔な別証明を与えることも可能である.)上記の結果をまとめた論文は``Graph and Combinatorics''に掲載が決定している. また,国内の主要な組合せ論の研究者が参加する「離散数学とその応用研究集会2014」を新潟市にて主催し,当該研究分野に関する多くの情報を得るとともに,他の研究者との共同研究を進展させることもできた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の研究グループとの共同研究は,当初計画していたもの以上の結果を得ることができた.また継続的に行ってきた「1-平面的グラフの辺数の上界・下界の研究」に関しても新たな結果を得ることに成功している.(「現在までの達成度」参照.).さらに慶應大学の野口氏との共同研究は1-平面的グラフを異なる角度から扱うものであるが,この近辺の研究は非常に迅速に進展している.一方,横浜国立大学の松本氏との共同研究である「市松三四角形分割の研究」に関しては,新たな構造をいくつか発見してはいるものの,進展しているとは言い難い.どの結果も未解決な問題を多く含んでおり,今後のさらなる研究に繋がっていくものと期待できる. 上記の事実を総合して「おおむね順調に進展している」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は当課題研究の最終年度に当たる.これまでの研究結果をまとめ,国内外の研究集会で発表を行い,他の研究者からの評価を得たい.また得られた結果のうち,まだ文章化していないものを論文としてまとめる作業も行っていく.(特に「射影平面上の1-交差埋め込みの再埋蔵」と「閉曲面上の四角形分割の極小な縮小操作集合」に関する論文は,迅速に論文執筆を行い専門誌に投稿したいと考えている.)並行して,現在進行している研究を進展させていきたい.ここでは「再埋蔵」というキーワードを強く意識し,1-平面グラフに関する新たな結果を創出していく.このために,現在,自身の研究室のメンバーとともに,最適1-平面グラフの再埋蔵を列挙するプログラムを改良中である.具体的には5月半ばまでに完成させる予定であるが,その後,計算機を用いて得られた結果から読み取れるグラフの構造を抽出し,数学の定理として何が言えるのかを考えていく.具体的な問題としては,向き付け不可能な閉曲面を三角形分割することのできる最適1-交差埋め込みの存在について議論を行っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通りに予算を執行しているが,学内の委員会等と予定が重複してしまい,参加を予定していた研究集会(「第26回位相幾何学的グラフ理論研究集会」と「第11回組合せ論若手研究集会」)に参加することができなかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には,これまで得られた研究結果をまとめて国内外の研究集会で積極的に発表を行っていく.そのための旅費を中心に研究費を執行する予定である.現在,参加しようと考えている主な研究集会は以下の通りである:8th Slovenian Conference on Graph Theory(スロベニア,6月),RIMS共同研究「デザイン,符号,グラフおよびその周辺」(京都大学数理解析研究所,7月),離散数学とその応用研究集会2015(熊本大学,8月),日本数学会秋季総合分科会(京都産業大学,9月),第27回位相幾何学的グラフ理論研究集会(横浜国立大学,11月),応用数学合同研究集会(龍谷大学,12月),日本数学会年会(筑波大学,3月).その他にも,共同研究や他の大学のセミナー等に参加し,情報収集及び共同研究を進めていきたい. また,必要に応じてグラフ理論・計算機関連の書籍を購入する.
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