「定理 球面以外の任意の向き付け可能閉曲面Fに対して,Fを三角形分割する最適1-平面グラフが存在する」という事実に対して,向き付け不可能閉曲面に関しては種数の低い(4以下)ところの結果しか存在していなかった.平成27年度には,東京電機大学の野口氏,新潟大学の長澤氏との共同研究の結果として,この近辺の問題を大きく進展させることができた.得られた結果は「定理 任意の向き付け不可能閉曲面Fに対して,Fを三角形分割する最適1-平面グラフは存在しない」というものである.我々は研究開始当初,そのような最適1-平面グラフが存在するものと予想し,計算機を用いて実験を行っていた.ところが種数を大きくしていってもそのようなグラフを見つけることができなかったため,上述の事実を“予想”として,それを理論的に証明すべく研究を行った.その証明の中では特別な面歩道が問題解決の鍵となっているが,その構造を注意深く観察することにより「定理 最適1-平面グラフが他の閉曲面に三角形分割可能であれば,その三角形分割は少なくとも2つ存在する」という事実を示すこともできた.また,射影平面上の最適1-交差埋め込みに関して「定理 種数gの向き付け可能閉曲面S_gに三角形分割可能な射影平面上の最適1-交差埋め込みが存在するための必要十分条件は,g>2となることである」と「定理 種数kの向き付け不可能閉曲面N_kに三角形分割可能な射影平面上の最適1-交差埋め込みが存在するための必要十分条件は,k>3となることである」という2つのきれいな特徴づけを得ることができた. さらに,最適1-平面グラフが7頂点完全グラフをマイナーにもつための必要十分条件を示し,6月にスロベニアで開催された“8th Slovenian Conference on Graph Theory”にてその結果発表を行った.また,この内容に興味を持ったSoeg-Jin教授から招聘され,韓国高等科学院(KIAS)の主催するWorkshopで招待講演を行った.
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