研究課題/領域番号 |
24740058
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷川 眞一 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (30623540)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 離散数学 / マトロイド / グラフ / 剛性理論 |
研究概要 |
研究計画に掲げた対称分子グラフの剛性と大域剛性の特徴付けにむけ,今年度は主に(i)対称グラフ剛性の解析手法の整備, (ii)群ラベル付きグラフ上のマトロイド理論の整備,(iii)疎性条件を満たす群ラベル付きグラフの逐次的構築法の提案を行った。 より具体的に(i)(ii)では,Zaslawskyによって整備された群ラベル付きグラフ上でのマトロイド理論に基づき,群の要素上の劣モジュラ関数を用いた(ポリ)マトロイドの構築法を提案し,一部の部分クラスに対する線形表現を導いた。その理論の応用として、平面上の対称なグラフの剛性定理やTayの高次元剛体構造定理の一般化を導出し,理論の有用性を明らかにした。 今回の成果によって,具体的例題において観察されていた分子構造の自由度に対する対称性の影響が,一般的かつ組合せ的に説明可能である事が明らかにされ,自由度解析において利用されているMaxwellの条件に代わる新たな組合せ的条件を提案することが出来た。 (iii)では,グラフの2次元剛性解析の基本的道具であるHenneberg構築法の群ラベル付きグラフへの拡張を行い,これまで未解決であった2面対群に関して対称なグラフの2次元剛性の特徴付けに成功した。また提案した構築法に関して既約で最小なグラフが機械工学においてBottema's mechanismとして知られるメカニズムであることを証明し,さらに既約で極小なグラフからより広いクラスのメカニズムが存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回行った群ラベル付きグラフのマトロイド理論と構築法の整備は,対称グラフの剛性と大域剛性の解析のために必要不可欠な道具である。研究計画段階で想定していた通り,群ラベル付きグラフに対しても,通常のグラフの場合に対する組合せ的理論が素直に拡張できる事が今回の研究を通して明らかになった。また研究計画通り,解析が比較的容易な幾つかの構造モデルに対して,組合せ的特徴付けの導出が可能であることを確認した。このように,対称分子グラフの剛性と大域剛性の解析に向け,おおむね順調なスタートがなされたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は,2次元対称グラフの理論と2次元大域剛性理論の統合を図る。対称グラフの一般大域剛性に関する理論は未整備である。既知の2次元大域剛性の諸性質が対称性を考慮することによってどれだけ拡張可能かを十分に検討し,基本的諸性質を導いていく。 以下の2つの具体的問題に分割し目標の達成を図る:(i) 2次元対称グラフの一般大域剛性理論の整備 (ii) 大域剛性を保持する対称グラフの構築法の開発。 (i)に関して,2次元大域剛性定理は,Lamanの一般剛性条件を変形した形で記述されており,同様な変形が対称グラフに対しても可能である。この条件は必要条件ではあるが,十分性の証明が非自明な問題である。前年度に得られた群ラベル付きグラフ上のマトロイドと表現理論に関する知見をもとに,この条件を商グラフ上のマトロイド理論の立場から十分に理解する。 (ii)に関して,2次元大域剛性の組合せ的特徴付け定理の証明は,Connellyによる大域剛性を保持する単純なグラフ操作の発見が鍵であった。この事実に基づき,前年度提案した群ラベル付きグラフの逐次的構築法の各ステップが大域剛性を保持することを証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Hennneberg構築法の拡張や,対称グラフの剛性理論解析の整備等,幾つかの研究課題は海外の研究者と共同で行なっており,研究打合せのために4月,5月に長期海外出張を予定している。次年度使用の研究費は、この際の旅費に当てられる。
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