研究課題/領域番号 |
24740058
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
谷川 眞一 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (30623540)
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キーワード | 離散数学 / マトロイド / グラフ / 剛性理論 |
研究概要 |
研究計画に掲げた対称分子グラフの剛性と大域剛性の特徴付けに向け,今年度は(i)前年度に発表した対称性制約下での剛性定理を一般剛性の場合へ拡張し,(ii)高次元での大域剛性解析手法の開発を行った.詳細は以下の通りである. (i) 昨年度は対称性制約下での対称なグラフの剛性を解析したが,今年度は対称グラフの一般剛性の解析に取り組んだ.剛性行列をブロック対角化した際,巧い基底の取り方によって各ブロックの値が簡潔に記述できる事を示し,さらに昨年度開発した群ラベル付き商グラフ上のマトロイドの構築法と剛性解析手法を利用する事で,様々な古典的定理が対称なグラフの一般剛性へ拡張可能である事を証明した. (ii) グラフの大域剛性解析のための新たな手法を提案した.これまでグラフの大域剛性を証明するための主要ツールであった1-extensionとglueingという操作の一般化となる手法を提案し,Jackson-Jordanの2次元大域剛性定理やConnelly-Jordan-Whiteleyの剛体構造の大域剛性定理が容易に導かれる事を示した.またこの手法を利用してFrank-Jiangのk-chainの大域剛性予想を解決した.さらに分子グラフの大域剛性特徴付けに向け,分子グラフの簡易モデルである剛体ヒンジ構造に対し,大域剛性のための十分条件を証明した.この成果はヒンジに対する冗長性が大域剛性を意味する事を意味しており,Connelly-Jordan-Whiteleyの剛体ヒンジ構造の大域剛性予想の一方向を解決した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果(i)においては,昨年度に開発したマトロイドの構築法が分子対称グラフの剛性解析において十分に強力な理論である事が確認された.さらに分子グラフの簡易モデルである剛体ヒンジ構造に対して本プロジェクトの目標の定理が成立する事を示しており,分子グラフの大域剛性特等付けに必要な基礎理論が順調に整備されていると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した,高次元大域剛性の解析手法を対称なグラフの対称大域剛性へ拡張する.それを利用して対称な剛体ヒンジ構造の対称大域剛性を証明し,これまでの既存成果を包含する一般理論を構築する.
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