研究課題/領域番号 |
24740060
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
友枝 恭子 摂南大学, 理工学部, 講師 (90611898)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 液膜流 / ナヴィエ・ストークス方程式 / 自由表面流 |
研究実績の概要 |
重力場の下、斜面を流れる非圧縮性粘性流体の自由表面流について引き続き考察を行った。この現象はナヴィエ・ストークス方程式の自由境界問題として記述される。本研究では、この自由境界問題に対して水平方向へ周期境界条件を課した場合を特に扱っている。この線形化問題に現れる線形化作用素が解析的半群を生成するためにはレゾルベント評価が必要である。レゾルベント評価自体は西田-寺本-吉原(2005年)で得られていたが、この手法を簡略化した場合においても同様の評価が得られることを昨年度の寺本惠昭教授(摂南大学)との共同研究により示した。本年度はまずこの結果を国内外の研究集会で発表し議論を行った。先行研究では局所化した解を張り合わせることでレゾルベント評価を得ていたが、寺本教授との共同研究では解の張り合わせ行わず与えられた線形化問題に対する解を用いるため、より精密なレゾルベント評価を得ることが期待できる。これは線形化作用素の固有値をより詳細に調べるうえで重要である。そこでまず線形化作用素が0を固有値に持たないレイノルズ数とウェーバー数を不等式評価として与えた。壁面上を流れる液膜流に対しても同様の評価を与えた。次にレゾルベント評価の係数部分に着目し、先に得たレイノルズ数とウェーバー数に対する結果を基に係数計算を行っている。 また伊東恵一氏(元 摂南大学教授、現 立教大学)と共に研究集会を開催した。流体力学、偏微分方程式、応用数学、数理物理学の若手研究者を招き講演や議論を行い、本研究に関する問題意識の共有や問題解決に努めた。これをきっかけとして、今後各分野の知見や研究手法を融合させた学際的研究により、新たな知見が得られることを期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
斜面上の液膜流に対する長波近似の正当性についてはいくつかの先行結果がある。壁面上の液膜流に対する長波近似の正当性については、状態が安定な場合に限定することで先行研究で用いられた手法が応用できる可能性がある。そのためには壁面を含めた斜面上での液膜流の線形化問題に対して現れる線形化作用素の固有値をより詳細に調べることが重要である。1つの目安として線形化作用素が0を固有値として持たないときのレイノルズ数とウェーバー数の不等式評価を与えた。この結果を基に固有値の存在範囲を調べるが、できる限り数値として与えることが重要である。
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今後の研究の推進方策 |
ナヴィエ・ストークス方程式の自由境界問題に対して水平方向へ周期境界条件を課した場合において、その流れを調べるために数値シミュレーションに関する共同研究を予定している。この結果と今までに得たレイノルズ数とウェーバー数の評価を基にレゾルベントの係数部分を具体的な不等式評価として与える。これらの結果から線形化作用素が安定になるような固有値の存在範囲を調べる。得られた結果を取りまとめ国内・国外の研究会で講演し、他研究者の批判や助言を仰ぎたい。国内では8月に国外では12月と3月の研究会に参加予定である。
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