研究課題
昨年度の継続研究として,インフレーション型リスクモデルに対する保険料計算,破産リスク評価,再保険戦略についての研究を行い,共同研究者であるGarrido教授(Concordia大学)との共著論文を完成させた.モデルは,近年リスク理論で流行しているレヴィ型モデルに金利などの要素を考慮した拡張モデルであり,数学的にはレヴィ過程によって駆動される確率微分方程式の解析となる.この解の汎関数の期待値に対する確率解析を通じて,さまざまな保険料計算原理の具体的公式や,破産リスク限界の導出,またそれらを用いた再保険戦略の構築など,リスク理論全般にわたる総括的な論文を執筆した.これについては現在最終校正に入った段階で,これから投稿する予定となっている.次に,当期の計画であった破産リスク計量に対する高次漸近展開の研究を行い,破産確率に対するエッジワース型漸近展開の論文出版と共に,より一般のリスク計量が満足する積分方程式(再生型方程式)の解に対する漸近展開公式を導出した.これは保険の文脈では,保険料付加率(利益率)が小さいときの近似公式を与えることに相当し,より低い利益率の下での破産確率の精密な近似を与える公式として,実用上重要な結果と思われる.これらリスク計量に対する統計的推測の研究も行った.対象は近年のリスク理論で重要視されているGerber-Shiu関数と呼ばれる破産リスク計量である.この関数のフーリエ変換をノンパラメトリックな方法で推定し,その逆変換として対象の推定量を構成した.理論的には,その平均2乗誤差の解析評価やサンプルサイズに対する収束率などを求め,数値的にも良い推定量であることを示した.
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件)
Scandinavian Actuarial Journal
巻: 7 ページ: 620 - 648
10.1080/03461238.2012.755937
Insurance: Mathematics and Economics
巻: 59 ページ: 11 - 26
10.1016/j.insmatheco.2014.08.001
Journal of Statistical Software
巻: 57 ページ: 1 - 51