研究課題/領域番号 |
24740062
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鎌谷 研吾 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (00569767)
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キーワード | 統計数理 / マルコフ連鎖 / モンテカルロ法 / ベイズ統計学 / 隠れマルコフモデル |
研究概要 |
独立同分布や拡散過程の観測に対するモンテカルロ法の性質の研究を行った.とくにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法と非正則モデルの深い関係性や,高次元漸近論の二点について取り組んだ. (1)MCMC法のパフォーマンスが,モデルの統計的非正則性によって大きく異なることを示した.具体的に様々なモデルと状況下でMCMC法の収束レートを導出し,数値実験でそれらを確認した.幾つかはMCMC法の既知の問題点の再確認とも捉えられるが,MCMC法でいままで知られていなかった問題点を指摘することも出来た.このアプローチの利点は,MCMC法の複雑な構造を紐解くのではなく,より調べやすい,モデルの特性からMCMC法の性質が分かることである.隠れマルコフモデルもモデルの退化性など非正則性を持つことも珍しくなく,次年度に引き続き解析を行う. (2)MCMC法の高次元漸近論はRoberts, Gelman, Gilksによって1997年に始められたもので,これに私の研究しているMCMC法の有効性の性質の適用を行った.この適用により従来と異なる最適性の概念が定義できて,いままで調べにくかった裾の重い分布に対するMCMC法の高次元での有効性を解析することが出来た.この解析は隠れマルコフモデルへの逐次モンテカルロ法に対する高次元漸近論を念頭に置いたものであり,次年度に引き続き研究を行う. セミナー運営として,統計数学セミナー(東大吉田教授と共同主催;10講演)を行った.ウェブ配信を行い,東大駒場キャンパス,阪大豊中キャンパスを始め,各所へ配信した.また,大阪,ブダペスト,シャモニー,東京等各所で発表及びポスター発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度内では,上記(1,2)で示したように,マルコフ連鎖モンテカルロ法の漸近論の研究は想定より進んだ.とくに高次元漸近論により、マルコフ連鎖モンテカルロ法の新しい意味での有効性を定義できて,次年度の逐次モンテカルロ法の解析の足がかりになることが期待される。一方,隠れマルコフモデルやその統計手法の研究は期待したほどの進展は見られなかった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題最終年である2014年度は,前年度までの結果の発展として,高次元でのモンテカルロ法および逐次モンテカルロ法の振る舞いの評価を行い,数値実験による理論のサポートを行う.具体的には次の二点である. (1)モンテカルロ法の高次元漸近論を研究する.とくに,隠れマルコフモデルに有用な,逐次モンテカルロ(SMC)法の高次元漸近論を考える.与えられたモデルと観測の上で有効なSMC法を構築するために,制御変数の選択は欠かせない.様々な手法が提案されているが,理論的評価は不十分である.高次元漸近論はこれらの評価の一助となることが期待されており,私の研究もこの流れを汲む.既にMCMC法への高次元漸近論では一定の結果を得ており,これをSMC法に適用する. (2)上記の理論的解析を利用して新しいモンテカルロ法を考案し,数値計算で評価する.モンテカルロ法の理論的解析を行えば利点や欠点を理論的に考察できる.その利点をいかし,欠点を取り除くようなモンテカルロ法の構成を試みる.
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次年度の研究費の使用計画 |
所用のため出張期間を予定より短くしたため. 出張費に使用する予定.
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