研究課題/領域番号 |
24740062
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
鎌谷 研吾 大阪大学, 基礎工学研究科, 講師 (00569767)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モンテカルロ法 / 数理統計学 / 確率過程 |
研究実績の概要 |
独立同分布や拡散過程の観測に対するモンテカルロ法の性質の研究を行った.とくにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法の高次元漸近論と,逐次モンテカルロ法の解析の二点について取り組んだ. (1)MCMC法の高次元漸近論はRoberts, Gelman, Gilksによって1997年に始められたもので,これに私の研究しているMCMC法の有効性の性質の適用を行った.この適用により従来と異なる最適性の概念が定義できて,いままで調べにくかった裾の重い分布に対するMCMC法の高次元での有効性を解析することが出来た.本年度はさらに高次元で従来の手法を凌駕するMCMC法を提案し,収束レートを導出した.得られた手法を実際に確率過程のパラメータ推定問題に適用し有用な帰結を得た. (2)逐次モンテカルロ法の解析を行った.状態空間の次元が高次元になると逐次モンテカルロ法は不安定になる.この問題を解決するために,関連分野の研究者との共同研究を行い,高次元の状態空間を逐次的に動くことで不安定さの回避を行った. セミナー運営として,統計数学セミナー(東大吉田教授と共同主催;9講演)を行った.ウェブ配信を行い,東大駒場キャンパス,阪大豊中キャンパスを始め,各所へ配信した.また,台湾,ウォーリック(イギリス),シンガポール,ル・マン(フランス)等各所で発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度内では,上記(1,2)で示したように,有効なマルコフ連鎖モンテカルロ法の導出に成功した.この結果および関連して得られた結果は高次元漸近論の有効性の研究で重要な役割を果たす.また,隠れマルコフモデルやその統計手法の研究についても大きな前進が見られた.
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今後の研究の推進方策 |
(期間延長により)本研究課題最終年である2015年度は,前年度までの結果の発展として,高次元でのモンテカルロ法および,逐次モンテカルロ法の振る舞いの評価を行い,数値実験による理論のサポートを行う.具体的には次の二点である. (1)モンテカルロ法の高次元漸近論を研究する.とくに,極めて非対称な確率分布に対するマルコフ連鎖モンテカルロ法の解析を行う.実用上は事後分布の形状は複雑な事が多く,マルコフ連鎖モンテカルロ法のパフォーマンスの悪さとして表面化する.極めて非対称な確率分布を高次元漸近論に枠組みで解析する.おそらく離散の状態空間上の確率分布の高次元漸近論に帰着されるだろう.既に対称性を満たす確率分布については一定の結果を得ており,その手法をより一般化する. (2)関連分野の研究者との議論を通して,逐次モンテカルロ法の解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度中旬から逐次モンテカルロ法に関する関連分の研究者との共同研究が始まり,本研究が大きく進展した.反面,課題が大きくなり年度中で中途で完成するより,翌年度への共同研究の継続を行ったほうが良いと考えたため.
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者との研究打ち合わせや研究発表,関連書籍の拡充に使用する.
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