本研究計画の最終年度は、マルチレベルモンテカルロ法とフィルタリング問題の融合、および高次元で有効なマルコフ連鎖モンテカルロ法のエルゴード性解析を行った。
逐次モンテカルロ法の解析は本研究課題の第一のテーマである。一つ目の結果として、近年のホットトピックである、高次元での有効な手法の提案を行った。通常の逐次モンテカルロ法は高次元を苦手とするが、本研究で提案した手法は、通常のステップに加え、高次元空間を細分して逐次モンテカルロ法を行う手法である。そのパフォーマンスのよさは数値計算で調べられ、また理論的な保証も行った。二つ目としてマルチレベルモンテカルロ法との組み合わせを行い、新しい手法を提案した。この組み合わせは難問であったが特徴的なカップリングで達成した。後者は最終年度の結果である。これらの結果はシンガポール、イギリス、アメリカの研究者との共同研究で得ることができた。
高次元で有効なマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法の発見は本研究課題の主要な結果の一つである。通常のモンテカルロ法は高次元では著しくそのパフォーマンスを落とす。とくに裾が重い場合など複雑な分布の近似問題ではその傾向は顕著であった。本研究では、MCMC法の提案カーネルの不変分布に着目し、不変分布が事後分布よりも裾が重くなるように工夫を施した。この工夫によって頑健な手法を構成できた。手法のよさはシミュレーションだけでなく、高次元漸近論で示すことができた。加えて最終年度にはエルゴード性でも他の手法を凌駕する収束性を持つことを示した。本手法はまだ未解明な部分もあり,今後も引き続き研究を行う予定である。
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